GOOD DESIGN AWARD
2023年度グッドデザイン賞
Portrait - 齋藤 精一
2023年度グッドデザイン賞 |審査委員長
齋藤 精一

2023/4/3

アウトカムがあるデザイン

今、私がつくっているものは誰のためにつくっているのか? 今、私が買おうとしている製品の素材や成り立ちは社会にとって良いのだろうか? 今、私の目の前にあるものは、自分にどんな力を与えてくれるのだろうか?

デザインという言葉が多くの場面で使われる時代になった今、私たちものを創り出せる人・企業・産業は、デザインをすることを自負して、同じ方向に向かって進んで行けているでしょうか? 正解の無い複雑な世の中に対して、デザインは何が出来るでしょうか?

ものづくりの裏には、沢山のコトのデザインが必ず存在していますし、 コトのデザインを達成するために、必ずものづくりは存在します。 可能な限りアイデアの始まりから辿ってアウトプットまでを評価するグッドデザイン賞として、モノとコトのデザインという二元論で語ることではなく、「アウトカムがあるデザイン」というテーマのもとにさらに進化をしたいと思います。

現在では、余っているものを足りないところに届けることが情報のデザインによって可能になり、伝統的な手法やその地域だからこその知恵が、伝承されたデザインとして高く再評価され始めています。 デザインを大量生産・大量消費するサイクルではなく、沢山の良質なデザインを沢山の人に届けることも、デザインを必要とする人に必要な量だけ届けることも可能になりました。 また、企業の評価基準も変わり、社会に貢献することで経済効果が示せる時代にもなりました。

そんな時代だからこそ、グッドデザイン賞はデザインに関わる人や企業、団体などが生み出したアイデアに目を向けて読み解くことで、これからのデザインと産業・暮らし・社会が共に進むべき方向を見出す役割に挑戦したいと思います。 ソーシャルデザインという言葉が多くの場で使われるようになった20年前、ナラティブ=物語という社会的意義を求めた10年前、パーパスを企業価値やブランドとして定義した近年、こうした時系列の上に立ちながら、いまデザインに関わる全ての人が進むべき北極星を「アウトカム」として、皆さんのデザインを通して議論し見つけてまいります。 多様な視点や課題意識から生み出されたアイデアに満ちたデザインに出会えることを、審査委員一同楽しみにしております。


Portrait - 倉本 仁
2023年度グッドデザイン賞 |審査副委員長
倉本 仁

2023/4/3

デザインの意思

私たちの生きるこの世界は常に流動的で変化に富み、潮流のようなうねりによって物事の価値、文化、人々の興味が常に移り変わっています。

デザインは、人と事物と周辺環境のより良い調和を見つけるためにあると考えると、今私たちはどのようにそれらが調和した風景を想い描くべきでしょうか?

経済を牽引する産業に貢献したデザインの顕彰制度として始まったグッドデザイン賞は、その長い歴史の中で多様な世相を反映して変容しながら、時代時代の価値観を写し出す「ものさし」のような役割を担ってきました。我々が審査を担うデザインの事物には、企業や作者の想いや願いなどが宿っています。そうした「意思」はデザインを構成する要素の根幹となり、製品や取り組みを力強く駆動させる力となります。意思は取組の規模によって良し悪しを判断されるものではなく、例えば、身の回りのささやかな幸せを叶えるものであったり、実直な製品の適正進化であったり、自然環境や地球に暮らす全ての動植物への想いやりであったりと様々です。私たちはそうした意思の尊さを積極的に読み取りたいと思います。

また、意思の価値が重要視されると同時に、その意思が適切な方法、質の高い技術で実現・実装されているかどうかも極めて重要です。良いデザインとはプロジェクト全体を表す寛大な視野と細部にフォーカスされた飽くなきこだわりを併せ持つものです。

今年度もグッドデザイン賞を通して多様な願い、想い、提言に出会えることを楽しみにしています。


Portrait - 永山 祐子
2023年度グッドデザイン賞 |審査副委員長
永山 祐子

2023/4/3

デザインの力

「デザインの力を信じているか」とかつて聞かれたことがあり、その時、私は「信じている」と即答しました。でも今、本当にそうだろうかと思い返す自分もいます。私が育った子供時代(1980年代)は今よりも、なんだか明るい未来に向かって進んでいるというような漠然とした感覚があったように思うのです。そしてその中に新しいデザインと、そこから生まれたムーブメントがありました。今、私たちの子供たちが生まれ育っているこの時代は、未来に向かって夢が持てる状況なのか、新しいデザインによって明るい未来を見せることができているのか。世界中を席巻したパンデミックの波。未知のウィルスの恐怖もさることながら、私たち自身が課す行動制限によって元気を失っていく社会。もう起こらないとどこかで信じていた平和神話を打ち破る戦争の恐怖。じわじわと押し寄せる気候変動と災害。未来はもっと今より明るいなんて示せるのだろうか。そんな現状が私たちに突きつけられています。 でもモノを作り出す者として、もう一度、今この時代だからこそ「デザインの力を信じている」と言いたい。グッドデザイン賞は新たなテーマ『アウトカムがあるデザイン』。今年の成果を通して次年度のテーマを紡ぎ上げていくという試みが今年度からはじまります。常に今は過去から未来への通過点です。それぞれに信じ、望む未来を自分で手繰り寄せるための手段としてのデザイン。それを多くの人と共有し、未来を模索する場であって欲しいと思います。


主催者からの挨拶
Portrait - 深野 弘行
公益財団法人日本デザイン振興会 |理事長
深野 弘行

2023/4/3

2023年度グッドデザイン賞の募集を開始いたします。 コロナ禍による長いトンネルの先にようやく光が見えてきました。今年度は社会全体としてこれまでの様々な制約を見直し、人々の活動を活性させていくタイミングとなります。グッドデザイン賞も、新しい審査委員長による新体制のもと、応募される皆様がデザインに直接触れ、交流する機会をできるだけ増やしたいと考えております。その一環として、受賞展(GOOD DESIGN EXHIBITION 2023)についてはベスト100(GOOD DESIGN BEST100)に限定することなく、受賞作品全件の紹介を行うことといたします。 皆様もご承知の通り、グッドデザイン賞はデザインを特定のジャンルに限るものではありません。それぞれのデザインを創出するきっかけとなった人々の思い、それを形にしていくプロセスまでを多くの専門家が丁寧に読み解いていくところに、グッドデザイン賞ならではの特質があると考えております。この点に対する皆様からのご期待の表れとして、世界をリードする大企業から地域の中堅・中小企業、スタートアップ、行政や地域貢献活動をされている皆様など、幅広い層からのご応募をいただいています。グッドデザイン賞の傾向を見れば、この国が、世界が、いまどこを目指しているかを知ることができます。応募いただく皆様が自らの立ち位置と進むべき方向を知る手がかりを得ることにつながるでしょう。 本年は、デザイン界にとって特別な年になります。10月には、世界からの参加を得て「WDO世界デザイン会議東京2023(World Design Assembly Tokyo 2023)」が開催されます。時代の大きな曲がり角にあって、デザインが目指す方向や直面する課題などを議論する国際的な場となります。本年の受賞展はこの時期に合わせて開催いたします。世界と日本のデザイン関係者に対して、日本のデザインがいまどのようであるのか、グッドデザイン賞の受賞作品を通じて力強く示す機会にしたいと考えております。 2023年度のグッドデザイン賞に皆様からの活発なご応募をいただきますことを、主催者として心より念願しております。

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グッドデザイン賞は、公益財団法人日本デザイン振興会が運営しています。