GOOD DESIGN AWARD
2022年度受賞結果
主催者挨拶
Portrait - 深野 弘行
公益財団法人日本デザイン振興会 |理事長
深野 弘行

2022/10/7

本日、1,560点の2022年度グッドデザイン賞受賞作を発表することができました。受賞された皆様に対し、主催者として心よりお祝いを申し上げます。たゆまぬご努力と周囲の皆様の支えによる受賞であり、関係された皆様全てにお喜び申し上げます。

今年度の応募件数は5,715点に達しました。記録的な応募数となった昨年度とほぼ同じ水準で、デザインへの社会の期待と、日々デザインに携わる皆様の熱い思いが変わらないことが示されました。

グッドデザイン賞は、社会を良い方向に導く力を持つデザインを発見し、社会に広げるとともに、新たなデザインの創出につなげていくことを目指しています。今年度のテーマ「交意と交響」の下、社会の課題や人々の切実な想いに寄り添う意思を持ち、人々に「あってよかった」との共感を呼び起こすデザインを数多く見出すことができたと感じています。 惜しくも受賞に至らなかった皆様に対しましても、デザインの価値を理解されて全力で取り組まれたことに対して、心より敬意を表したいと思います。

素晴らしいデザインを見出すことにご尽力をいただいた安次富審査委員長、齋藤副委員長、そして約90名の審査委員の皆様に対しても、この場をお借りし改めて御礼を申し上げる次第です。 これから受賞展の開催などを皮切りに、受賞デザインの価値を広く発信するとともに、11月1日にはグッドデザイン大賞の選出を控えています。ぜひ多くの皆様から引き続きご注目をいただきますようお願い申し上げます。


「隔たり」のない、さらなる交意と交響をめざして
Portrait - 安次富 隆
2022年度グッドデザイン賞 |審査委員長
安次富 隆

2022/10/7

グッドデザイン賞受賞おめでとうございます。 今年度は5,715件の応募がありました。応募数が約1,000件増加した昨年度とほぼ同数。デザインで私たちの暮らしや社会をより良くしようとする人々の意識と勢いの高まりを感じます。これらの人々の意力と創造が響き合えば、デザインの力は何倍にも増すと考え、「交意と交響」を今年度のグッドデザイン賞のテーマに掲げました。

結果としてグッドデザイン賞受賞数は1,500件以上、いまや日常となったコロナ禍での生活に役立つデザインが増えた一方で、様々な「隔たり」をなくすデザインが多かったことも印象的でした。「隔たり」は、区別や区分によって顕在化します。しかし、普段は意識していない潜在的な「隔たり」もあることに気付かされました。

例えば「UNI-ONE」は、着座し手放しで移動できるモビリティによって、車椅子使用者と健常者の身体的・心理的隔たりをなくしています。車椅子使用者と健常者のどちらも、UNI-ONEを利用している場ではお互いの違いを意識することがありません。

「まほうのだがしやチロル堂」もその一つです。福祉活動の、助ける、助けられるという授受の意識を「チロル」という店内貨幣を介在させることでなくし、子どもなら誰でも境遇の差を気にすることなく支援を受けられる場を提供しています。 UNI-ONEとチロル堂に共通しているのは、身体的あるいは経済的な区別や区分を無意味なものとすることで、無意識に存在する「隔たり」をなくしていることです。これは従来のユニバーサルデザインや福祉活動のように、弱者に歩み寄る利他的なデザインとは異なっています。

「LinkBuds」にも同様のコンセプトを感じました。LinkBudsを使えば目の不自由な方も、オンラインの情報を得ながら街歩きできます。それを可能にしているのは、オープンイヤーヘッドホンということだけでなく、耳元を指で叩いて操作できる目視不要のインターフェイスだと思いました。

隔たりとは、壁や枠、溝と同義です。それらをなくすことは、見通しの良いフラットな状態を意図してつくることを意味しています。そこではあらゆるモノゴトの流動性が増し、人々の「交意と交響」がさらに活発化していくでしょう。

マスク着用、ソーシャルディスタンスなど、コロナ禍で新たな隔たりが生まれました。その一方で、リモートワークのように地理的な隔たりがなくなったこともあります。デザインで重要なことは、それらの消失と獲得の是非を見極めることです。失ったこともあれば得たこともある。全ての人々が心地よい暮らしを得るためには、有形無形の隔たりの存在を解消していくデザインがより一層求められるように、今年度の受賞結果を通じて思います。


社会の「意」を交わらせ、響き合わせる
Portrait - 齋藤 精一 2022
2022年度グッドデザイン賞 |審査副委員長
齋藤 精一

2022/10/7

グッドデザイン賞を受賞された皆様、おめでとうございます。 今年も2022年らしいたくさんのグッドなデザインに出会うことができました。交意と交響をテーマに、審査委員による活発な読み込みと議論を重ねてきたことで、あるべきグッドデザインの羅針盤が見えてきたように思います。

今の時代にあるべきデザインとは、大きな世界の中で解像度をどれだけ高くして社会を見るか・社会の中にいる人や営みの解像度をどれだけ高く見ることができて、そこに存在する様々な「意」を交え響かせることができるのか、そうした姿勢に裏付けられたデザインであって、それらが様々な分野の多種多様な応募作を通じて示されました。

これまでの認識だと小さな経済圏と見なされるような領域から、今年は特に人やコトと正面から対峙して分析し、デザイナー自らの視点を入れ込んでデザインを実装させた、素晴らしい試みやプロダクトが数多く認められました。例えば、地域で子どもたちの成長を支える活動「まほうのだがしやチロル堂」や、歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」、杖「ヴィルヘルム・ハーツ」など、ビジネスとして考えるとマーケットの規模などで開発や参入が難しいと思われていた分野でも、企業規模やものづくりの仕方などを工夫することで有効なエコシステムが形成されていると感じられました。

大きなマーケットを対象に多様な製品を提供する企業の素晴らしい試みにも出会いました。掃除機「コードレススティッククリーナー PV-BH900SK」やゲーム機「Xbox Adaptive Controller / Xbox Series X/S」、小型射出成形機「AE-M3・M10・M3V」などは、すでにマーケットに投入されている製品に対して、様々なニーズやサスティナブルなどの動向を考慮し、考察し、理解した上で、製造や開発の手法の方程式を変えたもので、社会に対して企業としてのメッセージとともに、これからの社会の中でのデザインのあり方を提案しているケースであると理解できます。

デザインの定義は何なのか?と様々な場面で議論されていますが、今年度のグッドデザイン賞審査を通して、デザインの定義とは、社会に対しての行動/交動そのものだと実感しています。すべての人の生活を良くしたい。できる限りすべての人に良い成果を届けたい。物も含めた世の中の「命」をもっと大切にしたい。このような交意を持ってモノやコトなど様々なデザインをすること、それを使うこと、そのプロセスに少しでもいいので参加することが交響となり、強いうねりとしての現在のグッドデザインであると、受賞デザインから感じ取っていただけることを望んでいます。

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グッドデザイン賞は、公益財団法人日本デザイン振興会が運営しています。