受賞ギャラリー
2023
グッドデザイン金賞
木造4階建て県営住宅
新浜町団地県営住宅2号棟建替事業
受賞対象の詳細
2019年に改正された建築基準法によって、日本で初めて実現した、「あらわし木造4階建て県営住宅」。330㎜角の大断面集成材の柱・梁を内外にあらわした軸組構法で、今後の中高層木造建築への応用と展開が可能な普遍性と、敷地に根差す地域性を同時に合わせ持つ、新しいモデルとなる建築です。
※ 自動翻訳サービスDeepLを利用して生成されたテキストの場合があります
デザインのポイント
- あらわし木造4階建て共同住宅を実現する、防耐火、構造・設備・遮音・建築計画の高度な統合
- 木造軸組構造の軽快さを活かした、地域に開いた明るい住宅環境の実現
- 木材のローリングストックを念頭にした、先行発注による地産木材の調達
デザイナー
カワグチテイ建築計画 川口有子 鄭仁愉 若林英俊 田中啓介 +島津臣志建築設計事務所 島津臣志 島津美樹 +内野設計 内野輝明 山本めぐみ 井口奨也+長谷川大輔構造計画 長谷川大輔

利用開始
2023/03/01
背景
「新浜町団地県営住宅」は、建設から約55年が経過し、入居者の高齢化などの社会状況の変化、建物の老朽化、居住性能の改善に対応する必要が生じていました。2020年、徳島県はこの新浜町団地の建替えの一環として、SDGsに貢献する「先進的な木造モデルの実現」を掲げ、設計コンペを開催しました。その背景には、「2050年カーボンニュートラル」宣言と、2019年の建築基準法改正により、建築物への木材利用をより一層推進する社会の動きがあります。一方で中高層木造建築物は、企業による競争的開発が活況を呈しているものの、コストの高さなどがあり、一般化されてはいません。こうした状況に対し、設計チームは地域の工務店でも施工可能で、かつ持続可能な林業に寄与する、普遍性のある木造中高層モデルを提案しました。
経緯とその成果
【1】日本で最も普及している在来軸組構法と、910㎜モジュールをベースとする従来の木造住宅の技術の延長で、中高層木造共同住宅で必要な防耐火・構造・設備・遮音性能・建築計画について、高いレベルで統合を図りました。【2】軸組み木造らしい軽快で開放的な建築で、住戸内に「間の間(あいのま)」と呼ぶパブリックとプライベートの緩衝的な空間を設けることで、住宅内に孤立せず地域とつながる生活の場を提案しました。【3】あらわしとなるメインフレームの大断面集成材は県外から調達。75分準耐火構造の最小断面である330㎜角で柱・梁を統一することで、材の無駄をださない計画です。床・合板耐力壁に用いた製材は県産スギを選定。着工に先駆けて先行発注することで、適材適所かつ、地域の林業へ過度な負担がない用材計画としました。
仕様
あらわし木造による県営住宅/地上4階建て/木造軸組構法/75分準耐火構造/敷地面積3,327.60㎡/建築面積635.62㎡/延床面積1,727.31㎡
※掲載している情報は、受賞当時の情報のため、現在は異なる場合があります。
審査委員の評価
担当の審査委員
駒田 由香岩月 美穂栃澤 麻利仲 俊治
評価コメント
なんといっても日本初である。そして、単に木造をあらわしで使っただけでなく、「間の間」という「住宅の中の外向きの空間」など、木造であることをプランニングの提案にまで昇華させている。設備の更新、木材のストックなど、中高層木造の可能性を具現するべく隅々まで考え抜かれている。そしてこれらを在来木造の延長線上で実現している。大変な力作であり有意義なモデルだ。法改正が呼び水になったとはいえ、また、社会的に意義があるとはいえ、具現化するのは困難の連続であったはずである。関係者全員の協働の成果として敬意を表したい。
