受賞ギャラリー
2021
グッドフォーカス賞[防災・復興デザイン]
公共施設
高田松原津波復興祈念公園 国営 追悼・祈念施設
受賞対象の詳細
2011年3月11日に発生した東日本大震災への国営追悼祈念施設である。震災遺構を含む一帯が復興祈念公園となっており、道の駅と伝承館を包含した建物、3.11の式典広場、献花台を設置した海を望む場などが海へ向かう軸線上に配置されている。震災に対する追悼・祈念を行うとともに、震災の記憶を未来へと伝承していくための施設である。
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デザインのポイント
- ふたつの包摂線:震災遺構を緩やかにつなぐ大きな包摂線と追悼エリアを包み込む小さな包摂線
- 祈りの軸:包摂線の中心を通り、敷地入口から海を望む場へと貫かれる参道としての軸線
- 復興の軸:祈りの軸と直交し、震災遺構と伝承施設、道の駅をつなぐことで被災・復興・未来を表す軸線
プロデューサー
株式会社内藤廣建築設計事務所 内藤廣
ディレクター
工学院大学 建築学部 教授 篠沢健太+東北大学 災害科学国際研究所 災害人文社会研究部門 准教授 平野勝也
デザイナー
株式会社プレック研究所・株式会社内藤廣建築設計事務所設計共同体 前澤洋一、奥山伊作、森田緑、神林哲也、福林一樹、前川智哉
詳細情報
利用開始
2019/06/29
設置場所
岩手県陸前高田市気仙町土手影180
背景
2011年3月11日に発生した東日本大震災は三陸地域に甚大な被害をもたらした。国土交通省東北地方整備局によって岩手県、宮城県、福島県の三県に国営復興祈念公園を設置することとなり、そのうちの岩手県陸前高田市の復興祈念公園を設計した。陸前高田市は震災遺構を保存する決定がなされ、震災の記憶を次世代に引き継ぐ一方で、今なお思い出したくない人もいることを考慮したランドスケープデザインが求められた。また、公園には様々な行政上の境界があり、公園、道の駅、伝承施設、人道橋、防潮堤と異なる行政管轄のものを統合することが必要であった。また、本施設は無宗教の追悼・祈念施設であり、かつ追悼・祈念のあり方も人それぞれであることを考慮し、来訪者が一様に気持ちを静めて祈ることのできる場(海を望む場)を設えた。
経緯とその成果
広大な県営の公園の一部に設定された国営復興祈念公園の敷地は、海の見えない防潮堤の背後の低地にあり、「海に対して思いを馳せる」ための施設を計画した。「大きな包摂線」によって「街と防潮堤が和解する」ための緩衝材となり、「小さな包摂線」は「過去への祈りと未来への願いが和解する」ような場を醸し出す。「祈りの軸」によって「人と自然が和解する気持ち」に寄り添い、「復興の軸」は「亡くなられた方たち(過去)とこれからを生きる人たち(今・未来)とが和解する気持ち」に寄り添うことができるように計画を行なった。建築上の工夫として、追悼の思いを白い清澄な1本の線で表現した。長さ160mのPCホワイトコンクリートパネルをレーザー計測を使用して±1mmの精度管理を行なった。また、正面のファサードに穿たれた18,434の孔は2018年時点での犠牲者の数を表現しており、夜間は街の灯火となる。
仕様
[道の駅及び伝承館] 敷地面積:29,769.05㎡ 建築面積:3,992.43㎡ 延床面積:4,340.12㎡ ・主体構造・工法: 鉄筋コンクリート造、一部プレストレスト鉄筋コンクリート造、鉄骨造 階数:地上2階
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審査委員の評価
担当の審査委員
伊藤 香織五十嵐 太郎西村 浩平賀 達也
評価コメント
東日本大震災の後に登場したメモリアルの施設としては、横綱級の作品である。これは津波の記憶に関わるもっとも重要な国立のプロジェクトだろう。海へと向かう祈りの軸という構成は、やや古典的かもしれないが、建築だけで空間をつくるのではなく、防潮堤を含む土木やランドスケープと絡みながら、総合的にまとめあげたことは、現代的なデザインとして高く評価できるだろう。もちろん、そのスケール感覚は、ポスト311的でもある。また伝承館や震災遺構に加え、道の駅という現代の商業施設が付設するプログラムの組み合わせも興味深い。
