受賞ギャラリー
2020
グッドデザイン賞
手帳
あらお健康手帳
受賞対象の詳細
地域包括ケアシステム構築に向けた医療介護におけるアナログの情報共有ツールとして開発したが、人生会議や救急医療の情報も含めた。母子手帳などの規格統一により一生涯利用できる健康管理手帳として普及を目指している。また、一般市民が所持することで、災害時は公的機関が有するデジタル(ビッグ)データを補完することが可能である。
※ 自動翻訳サービスDeepLを利用して生成されたテキストの場合があります
デザインのポイント
- 5疾患の連携パスを統合し、医療・介護・福祉など多職種での利用を可能とした世界初の手帳である。
- パーソナルデータを本人同意のもと積極的に関係者に開示する仕組みにより、上質なサービスを享受できる。
- Society5.0を補完するアナログ・ツールとして、社会的課題に対応可能な汎用性と拡張性がある。
プロデューサー
一般社団法人荒尾市医師会 理事 中村光成
詳細情報
利用開始
2019/04
設置場所
荒尾市内の医療機関
背景
各自治体は、国から地域包括ケアシステムの確立が求められているが、具体的方法は自治体に委ねられている。荒尾市は、57.4Km2に5.2万人が住む地方都市で、高齢化率は35%を超え、地域包括ケアシステムは市全体の課題である。2009年、市立荒尾市民病院を中心に有明緩和ケアネットワークが立ち上がり、2013年、荒尾市医師会に在宅医療連携室が開設され、地域における多職種協働体制が構築されてきた。また認知症疾患医療センターを中心に支援事業が展開され、熊本大学で開発された地域連携パスは2016年から始まった大規模認知症コホート研究においてフォローアップツールとして活用されている。地域医療構想が始まり、医療需要に応じた機能分化が求められており、複数疾患を有する高齢者の多い当市では老若男女問わず利用可能な平易な連携ツールが必要と考えられた。
経緯とその成果
2016年は県内で地域連携のICTツール導入が始まったが、熊本地震の際には医療機関の電子媒体は機能不全状態なり、紙媒体のおくすり手帳の有用性が示される結果となった。それも踏まえ、2017年に運用されていた認知症、癌、糖尿病、心不全、脳卒中の連携パスの統合を目指し行政も交え荒尾市民病院と荒尾市医師会で検討を重ね、2018年に「あらお健康手帳」を開発した。熊本県の在宅医療サポートセンター事業の指定を受け、2019年から年間500部を目途に配布を開始している。多職種協働体制を支える情報共有ツールだけでなく、救急搬送や人生会議などの情報も含有しており、患者・家族が管理することで災害時のバックアップデータとなる。現在も認知症コホート研究で活用されており、今後は電子媒体との補完体制を構築し、公衆衛生などの医療研究や保健行政への活用も検討している。
仕様
A520穴バインダーに、利用者の基本情報・連携ノート・医療情報・介護情報・おくすり手帳・関連機関情報の項目毎に冊子(4〜8頁)にて構成した。追加冊子として、がん情報・糖尿病情報・心不全情報・頭とこころの記録(脳卒中・認知症情報)を準備している。現時点では、疾病を有する患者を対象とし、医療機関を中心に配布を開始しているが、段階的に一般市民へも配布を拡大する予定である。
※掲載している情報は、受賞当時の情報のため、現在は異なる場合があります。
審査委員の評価
担当の審査委員
井上 裕太川上 典李子ナカムラ ケンタ山出 淳也山阪 佳彦
評価コメント
おくすり手帳や介護情報、医療情報など、健康に関する管理書類は、なぜか今までそれぞれバラバラに存在していた。それをとても簡単な方法で一冊にまとめ普及させようという取り組み。まずはリリースし拡げた行動力に地域包括ケアの未来を感じ、大いに評価した。全国でも同じ様な取り組みが進むことを期待したい。
