GOOD DESIGN AWARD

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CC

2012

GOOD DESIGN|グッドデザイン賞

受賞対象名
林道(作業道)・土場・休憩施設 [尾鷲コーポラティブフォレスト]
事業主体名
特定非営利活動法人ア・ピース・オブ・コスモス
分類
都市づくり、地域づくり、コミュニティづくり
受賞企業
株式会社設計領域 (東京都)
特定非営利活動法人ア・ピース・オブ・コスモス (三重県)
上岡林業 上岡嗣泰 (三重県)
受賞番号
12GC31037
受賞概要
2012年度グッドデザイン賞受賞概要

受賞対象の概要※掲載している情報は、受賞当時の情報のため、現在は異なる場合があります。

概要

国内有数の多雨地域である三重県尾鷲市、中でも三木里町は前面をリアス式海岸の賀田湾、背後を熊野古道の難所で知られた険しい山々に囲まれ、津波に対して極めて脆弱な地理的条件を有している。本プロジェクトは、激しい降雨に耐えうる尾鷲式作業道規格を開発・整備することにより持続的な地域集約型林業への途を拓くと同時に、人工林を地域の防災拠点として捉え整備したところに特徴がある。作業道によって臨海集落から高台山間部をつなぐ避難経路を補完し、災害時に物流拠点となる土場整備や、間伐材を用いた集会・備蓄小屋を地域住民のセルフビルドで建設することにより、津波に備えた「事前復興まちづくり」モデルとなる森づくりを実現した。

プロデューサー

特定非営利活動法人ア・ピース・オブ・コスモス 中村レイ

ディレクター

東京大学 羽藤英二 准教授

デザイナー

株式会社設計領域 吉谷崇、新堀大祐

詳細情報

http://s-sr.jp

利用開始
2011年12月18日
販売地域

日本国内向け

設置場所

三重県尾鷲市三木里町新田

受賞対象の詳細

開発・企画について

サステナブル社会(持続可能な社会)の実現に向けて、応募対象が取り組んだこと

作業道や土場の開設によって廃棄物が発生せず、森の中で循環するようなデザインに留意している。工事に伴う切土・盛土の量をバランスさせるとともに、土場や作業道の土留めは発生した礫を用いた石積み擁壁とした。また、間伐した杉は地元の人々とともに皮を剥き森の中で乾燥させ、地域住民のセルフビルドによって六角形の作業小屋づくりに用いられた。作業小屋は地域イベントの拠点として、また防災備蓄倉庫として用いられる。

デザインについて

「身体・人間」の視点からみて、応募対象が提供できること

今回実現した作業道によって、町から川沿いを歩き、森へとつながる歩行者ネットワークがつながった。日常的に森林を歩行することによって、抗酸化力の増加、血圧の沈静化等のセラピー効果が期待される。一方、このルートは今後、地域の防災避難路の一部としての活用を検討中である。東日本大震災の教訓を鑑み、有事に実際に避難路として機能させるために、日常的に地域住民に利用してもらうための避難訓練が計画されている。

「生活」の視点からみて、応募対象が提供できること

作業道も土場も、基本的には間伐や搬出、乾燥等の林業施業に用いられるものであるが、ここでは同時に、作業道は生活道路の一部として、石積みに囲まれたシンボリックな円形土場は地域イベントのステージとして、六角形の作業小屋は休憩施設や地域の集会施設として用いられる。さらに、津波等の災害時においては、一時避難のための休憩施設、広場、備蓄倉庫などの生活を支える施設として活用されることとなる。

「産業」の視点からみて、応募対象が提供できること

今回開発した多雨に強い「洗い越し」を備えた作業道の構造は、ひと雨ごとに作業道つけ直しを余儀なくされていた尾鷲の森において安定的な森林管理を可能にする。さらに、敷地の外縁に配置された土場をハブとして、隣接する敷地へと道路網を伸ばすことが可能な計画とすることで、将来的な大規模森林管理に向けた広域ネットワークの構築も視野に入れている。森林の広域管理が可能となればより低価格で安定的な林業経営が期待される。

「社会・環境」の視点からみて、応募対象が提供できること

農山村社会の縮退により、放置され環境の悪化した人工林は全国的な問題となっている。一方で今回の作業道整備モデルは、林業経営だけでなく、まちづくりや防災の観点から人工林に人の管理が入る機会を増加するものとして期待できる。間伐など適切に管理された人工林は、多様な下層植生を育て、それらに依存する昆虫や鳥獣などの高い生物多様性を有するほか、表土の流出等を抑えるため土砂災害等も抑える働きを持つ。

ユーザー・社会に伝えたいこと

行き詰まる林業経営、疲弊した地域コミュニティ、そして必ず来るであろう地震と津波災害、それらを個別の案件ではなくひと繋がりの問題として捉えたとき、その中心には「森」があった。人や町、生活から要素として切り離されてしまった人工林にインターフェイスのデザインを与え、産業/防災/コミュニティの拠点として再生すること。本プロジェクトは森と生活との関係性の再定義に向けた、ささやかではあるが確かな第一歩である。

どこで購入できるか、
どこで見られるか

三重県尾鷲市三木里町新田
エンジニア・アーキテクト協会 WEB機関紙

審査委員の評価

国内の林産地には、放置され環境悪化が進む人工材の課題がある。三重県南部に位置し熊野灘に面する国内有数の多雨地・尾鷲は、放置された人工材に加え、ひと夏の雨で使いものにならなくなる林業作業道の課題があった。そこで、ローコストで多雨に強い「洗い越し」を備えた作業道の整備が、日頃から住民に利用してもらう歩行ネットワークとなり、地震と津波対策のための日常的な避難訓練の道ともなる。また、石積みの円形土場や地域住民のセルフビルドによる六角形の作業小屋づくりは、「街と森をつなぐ」防災備蓄などの避難拠点、地域イベント拠点として機能するなど、自然と共生し持続的な林業経営を支えるすぐれた取り組みである。

担当審査委員| 南雲 勝志   大島 礼治   黒川 玲   手塚 由比   堀井 秀之   森田 昌嗣  

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