グッドデザイン賞の活動「フォーカス・イシュー」の7つのテーマごとに、研究生がワーキンググループを組み、社会課題の解決を試みる、新たな可能性・提案性を持つデザインアプローチをリサーチ・検証の上、自らもその課題を解決するデザインを企画し、発表までをグループごとに行いました。
- TOP
- フォーカス・イシュー研究会
社会課題に向き合う
フォーカス・イシュー研究会
グッドデザイン賞には、審査を通じて「デザインが社会においてできること」を示していくための「フォーカス・イシュー」という取り組みがあります。これからの社会を担う全国のデザイン学生の皆さんとともに、フォーカス・イシュー(社会課題)にデザインで向き合う研究を3ヶ月に渡り行いました。
PROCESS

研究会の概要

FOCUSED ISSUES 2018
グッドデザイン賞の審査委員を兼任する「フォーカス・イシュー・ディレクター」が、グッドデザイン賞の審査過程において、それぞれの知見に基づき、デザインの視点でテーマ(課題)を読み解く中、研究生も並走してそれぞれの担当するテーマに向き合い、課題解決方法を考えました。
- テーマ
- 学びを高める
- ディレクター
- 水野 祐
- 研究生
-
- 嵐 萌希
- 神戸芸術工科大学
- 杉森 丞
- 神戸芸術工科大学
- 藤原 佑希
- 長岡造形大学
- 望月 航平
- 多摩美術大学
- Lim Jia Yen
- 豊橋技術科学大学
- テーマ
- 生活価値を見出す
- ディレクター
- 芦沢 啓治
- 研究生
-
- 秋山 怜美
- 多摩美術大学
- 今村 明日香
- 筑波大学大学院
- 大木 珠実
- 東京工科大学
- 大久保 優希
- 芝浦工業大学大学院
- 小池 理奈
- 慶應義塾大学
- テーマ
- 共生社会を描く
- ディレクター
- 太刀川 英輔
- 研究生
-
- 石田 祐暉
- 早稲田大学
- 岩田 爽平
- 武蔵野美術大学
- 大川 真莉菜
- 京都工芸繊維大学大学院
- 平山 義活
- 東京藝術大学
- 松村 茉由子
- 神戸芸術工科大学
SCHEDULE 2018
STEP 1
キックオフ・リサーチと課題の理解
@幕張メッセ
8/2
グッドデザイン賞二次審査会場でキックオフ
数千件のデザインが集結する二次審査会場で、各自の視点から優れたデザインアプローチを確認・発掘しました。フォーカス・イシュー・ディレクター、仲間とここで初顔合わせ。キックオフとしてミーティングとワークショップ形式のガイダンスも行いました。


STEP 2
ワーク期間 1
(アイデア出し&ブレインストーミング)
8/3~8/21
個別&グループワーク
個別リサーチと企画出しを行い、ワーキンググループのテーマごとに共有し、議論を深めました。グループとしてのアイデアを出し合い、この段階での企画をフォーカス・イシュー・ディレクターにプレゼンテーションできるようにまとめました。
STEP 3 アイデアを深める対話
8/22
フォーカス・イシュー・ディレクターとディスカッション
各ディレクターにワーキンググループの企画・アイデアを伝え、ディスカッションを行うことで、着眼点の広げ方、リサーチ方法などの改善点のアドバイスをいただきながら、企画の方向性を固めて行きました。


STEP 4 ワーク期間 2(ブラッシュアップ)
8/23~10/30
個別&グループワーク
フォーカス・イシュー・ディレクターとのミーティングで見えたことを企画に反映しながら、オンライン、オフラインでグループごとに集まり、企画のブラッシュアップを行いました。
STEP 5 グッドデザイン賞受賞展会場での成果発表
11/4
ステージでプレゼンテーション
グッドデザイン賞受賞展会場にて、フォーカス・イシュー・ディレクターや一般来場者の皆さんを前に、ステージで自分たちのリサーチ結果とアイデア/企画をリレー形式でグループ毎にプレゼンテーションしました。


STEP 6 まとめと振り返り
12/16
リフレクション
フォーカス・イシュー・ディレクターの西田さんをお迎えし、グループごとのまとめを行い、活動を振り返りました。


PROPOSALS
課題についてグループワークで議論を重ね、テーマ課題の解決アイデアを提案としてまとめました。グッドデザイン賞受賞展ステージで各グループ10分ずつプレゼンテーションを行いました。
- 提案1
- 技術を活かす
やさしい技術の活かし方
- 太田 明理紗
- 筑波大学
- 栗本 佳歩
- 早稲田大学
- 千葉 康貴
- 公立はこだて未来大学
- 平井 伸昌
- 富山大学
- 湯浅 翔
- 東京工芸大学
耳が聞こえない人の中には、聞こえるようになることを望んでいない人もいます。しかし、難聴自体を解決することに集中した一方通行のデザインばかりが目立つという現実があります。私たちは、その原因が「障がいを持った方に対する認知度の低さ」にあると考え、認知の輪を広げ、考え方を少し変えてみることが大切だと思いました。私たちは、デザインの力によって「技術を活かすことで実現できるより良い未来がある」ということを伝えたいと思いました。みんなが立場を越えて仲良くなれたらいいですよね!
- 提案2
- 働き方を変える
まぁるく働く
- 朝倉 綾海
- 東洋大学
- 丸山 博子
- 武蔵野美術大学
- 南 萌
- 多摩美術大学
- プーサプスワン タナポン
- 桜美林大学
“働く”とは日々の営みの中にあり、モチベーションを高める工夫をすることが仕事の質をよりよくすることに繋がるのではないかと考えました。私たちはその一つとして「ひとはな生花店」というものを考えました。これは、一輪だけしか花を売らないお花屋さんです。購買者の視点からだけでなく、販売する側のことも意識した循環する仕組みを提案しました。
- 研究会の感想
-
・普段出会わない人達との素敵な出会いがあった
・様々なバックグラウンドを持つ人で集まった時の合意形成の難しさを実感
・“働く”というテーマがとっかかりづらかった
・循環する仕組みにも目を向けて考えられるようになった
- 提案3
- 学びを高める
教え合いで高め合い
- 嵐 萌希
- 神戸芸術工科大学
- 杉森 丞
- 神戸芸術工科大学
- 藤原 佑希
- 長岡造形大学
- 望月 航平
- 多摩美術大学
- Lim Jia Yen
- 豊橋技術科学大学
はじめに“学びを高める”とは具体的にどういうことかを考え、様々な意見が出た中で、「教え合う」ことが学びを高められるのではないかという考えに行き着きました。現在の義務教育ではあまり取り入れられていない、「ピアティーチング」の理論を応用し、新しい学び方を提案します。「教え合う」ことは、学生がより能動的に学ぶことができるものであり、これをもっと取り入れて行くことが“学びを高める”ための良い手段だと私たちは考えました。
- 研究会の感想
-
・意見の共有や計画性など、グループワークの難しさを経験できた
・長期間、1つの題にみんなで取り組めた
・大勢の前で人に伝わるように話す能力が得られた
- 提案4
- ローカリティを育む
ローカリティを巡った
日常の再定義
- 井上 拓
- 九州大学
- 岡本 真由子
- 京都工芸繊維大学
- 須藤 か志こ
- 公立はこだて未来大学
- 坪内 あかり
- 武蔵野美術大学
ローカリティと聞くと、のどかで自然に近い風景や物事を思い浮かべることが多いと思います。こういった既存のローカリティは有形物や祭事の保護保存を通じて養われていますが、保護保存とは過去を肯定するという行為で、今回の「ローカリティを育む」というのは未来に向けたアプローチ。さらに、私たちの世代が体感しているローカリティは、懐かしいと思う気持ちや居心地のよい帰属意識の感覚に近く、日常的で無形のものも含まれることも同世代の調査でわかりました。そこで私たちは「育む→育まれる」と言い換え、直接ローカリティに介入するのではなく、ローカリティが自然発展する土壌づくりを目指す提案を考えました。
- 研究会の感想
-
・抽象的なものを論理的に論じることの経験となった
・人間は論理と感性の2軸で判断すると感じた
・言葉をツールとして扱う能力を得た
・グループワークにおいての主体性が大切だと感じた
- 提案5
- 社会基盤を築く
やわらかな社会基盤 〜デザインの立場からの新たなビジョン〜
- 芳村 帆夏
- 筑波大学
- 大栁 友飛
- 明治大学大学院
- 富永 宗汰
- 多摩美術大学
- 藤田 有琳
- 東京理科大学
- 吉田 卓史
- 京都工芸繊維大学
社会基盤と聞いて思い浮かぶことは何でしょうか。デザインに関心のある私たちは、物理的なものではなく、知識や権利など、現代の成熟した日本社会におけるフレキシブルなものに注目しました。知識を支える大きな要素として「教育」があります。しかし「教育」は退屈であるというイメージがあるため、私たちは学びの場を動画配信ツールとして提供することを提案します。その名も「アナタモティーチャ!」。柔軟で楽しい学び。ハードではなくやわらかな社会基盤が私たちの提案する新たなビジョンです。
- 研究会の感想
-
・やり遂げる根性、人前で話す度胸を得た
・プレゼンテーションに対する姿勢を改めることができた
・フィードバックを反映させる速度の大切さを知った
・自分以外の人のアイデアを発展させること
- 提案6
- 生活価値を見出す
かもね。 〜これからのいいねのカタチ〜
- 秋山 怜美
- 多摩美術大学
- 今村 明日香
- 筑波大学大学院
- 大木 珠実
- 東京工科大学
- 大久保 優希
- 芝浦工業大学大学院
- 小池 理奈
- 慶應義塾大学
生活価値とはなんでしょうか。それは、「些細なこと」と「他者とのつながり」が深く関わっています。日常で何気なく起きていること、人に貢献しているという意識。SNSでの「いいね」による評価が身近な例ですが、それが本当の生活価値なのでしょうか。他者からの評価に一喜一憂するだけでなく、自分で自分を認めることが必要だと考えました。「他者からの“いいね”を自分からの“いいね”に」。自分から承認する割合が増えることで、もっと自分を好きになり、もっと自分を見出せるはずです。電車で席を譲った時、ゴミを拾った時... 自分の心が満たされることってありませんか?生活価値は、ちょっとした意識を変えるだけで見出せるの、かもね。
- 研究会の感想
-
・抽象的なテーマだからこそ、伝え方を考えるきっかけになった
・様々な人がいる中でのグループワークの経験を積めた
・コミュニティが広がった
・人の考えを吸収して、視野が広がった
- 提案7
- 共生社会を描く
生物学上の共生のメタファーを
取り入れたデザイン提案の試み
- 石田 祐暉
- 早稲田大学
- 岩田 爽平
- 武蔵野美術大学
- 大川 真莉菜
- 京都工芸繊維大学大学院
- 平山 義活
- 東京藝術大学
- 松村 茉由子
- 神戸芸術工科大学
生物界で営まれている、種同士での弱さを補い合う矯正の姿ー。人と人、企画と企画、社会と社会、私たちの暮らす社会で営まれている様々な関係のなかでも、生物界と同じような共生の姿が実現しているのではないか?既にある共生の姿を見出し、解剖し、未来を見据え、痛みをすくい取り、共生の輪と共生の輪をさらに繋げることで、ただの「1+1」にとどまらないアイデアに繋がるかもしれない。そう考え、グッドデザイン賞を受賞したプロジェクト同士の共生関係の構築を試みました。
- 研究会の感想
-
・良き未来を描こうとする創造力ある人たちの複合知によるアブダクション
・個々の熱量とエネルギーがあった
・課題感を持った人たちが、解決したい課題の状態を丁寧にリサーチし、現状を無理に加工せず
周囲が納得する提案ができれば、アイデアはデザインとして適合されるのだと思った
・他大学の学生のスキルや考え方を知れた
・大学では学べないことを学べた
・物理的距離の不便さを解消してくれるツールの便利さを知れた