GOOD DESIGN AWARD

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CC

2021

GOOD DESIGN|グッドデザイン賞

受賞対象名
都市景観デザイン [歴史的水路「御殿堰」の再生]
事業主体名
山形市
分類
ランドスケープ、土木・構造物
受賞企業
空間芸術研究所 (山形県)
受賞番号
21G141337
受賞概要
2021年度グッドデザイン賞受賞概要

受賞対象の概要※掲載している情報は、受賞当時の情報のため、現在は異なる場合があります。

概要

デザイナーはかつて「山形県税理士会館」の設計の中で親水広場をつくり、隠されていた歴史的水路「御殿堰」の存在を浮かび上がらせた。以前より山形五堰を生かしたまちづくりを目指していた山形市がその試みに共鳴し、その一帯の御殿堰を歴史的な意匠を参照しつつ景観整備し、市民や観光客に山形市の歴史をより深く知ってもらえるよう工夫した。

デザインのポイント
1.現実的制約の中、江戸期の御殿堰本来の姿を玉石積で回復させつつ、堰堤等の工夫で水景を現代的に演出した。
2.奥行が不十分だった親水広場を官民の境界を超えて円弧状に拡張し、歴史と現代の対話の場をより充実させた。
3.水路上に佇めるデッキや案内板を設け、市民や旅人に御殿堰の魅力や歴史的背景がより深く伝わるようにした。
プロデューサー

山形市長 佐藤孝弘

ディレクター

大洋測量設計社 升川俊雄

デザイナー

空間芸術研究所 矢野英裕

詳細情報

https://is.gd/GwwBtd

利用開始
2021年4月1日
設置場所

山形県山形市旅篭町一丁目

受賞対象の詳細

背景

2017年12月に竣工した山形県税理士会館では、それまで建物の間に挟まれていて気づかれることのなかった歴史的水路「御殿堰」を顕在化させながら設計に取り込み、建物の大庇の架かった縁側空間と連続するように親水広場を水路に面して設けた。その時は敷地境界ぎりぎりまで計画したものの、山形市と水利組合の管理する御殿堰自体には手を加えることはできず、戦後コンクリートで塗り込められた殺風景な護岸などはそのまま残すしかなかった。会館の関係者側から特に働きかけた訳ではなかったが、竣工から一年以上が経過したある日、以前から市内を網の目のように流れている歴史的水路「山形五堰」(御殿堰はその一つ)の景観整備に力を入れていた山形市から、国からの補助も得て税理士会館前を含む御殿堰の景観整備を事業化できる運びとなったので、会館の設計者に協力してほしいとの話があり、全体監修とランドスケープデザインを担当することとなった。

経緯とその成果

土木設計を行う大洋測量設計社と空間デザインを手掛ける空間芸術研究所が共同で山形市と協議を行いながら進めた。従来の御殿堰はコンクリートで塗り固められて歴史的な外観を失っていた。近隣との権利関係もあって完全な復元は不可能なので、擁壁上から蔵王山系の安山岩の玉石を貼るような形で歴史的な意匠を尊重した再生を試みた。御殿堰は灌漑用水路でありかつ都市雨水も流入するので慎重に流量計算をした上で断面や高低差の設定を行い、流水量が減少した場合でも水を湛えた表情を維持できるよう堰堤を設けた。建物の設計の際には制限されていた親水広場の計画も、市と税理士会が協定を結ぶことで境界を超えたデザインとすることができた。歩道際の無粋な既存安全柵は撤去し、透過性の高いガラスの手摺をつけた見学デッキを水路上に設けることで、道行く人々がこの歴史的遺構と対話できる場所とし、さらに御殿堰の成り立ちを記した和英併記の案内板を設けた。

仕様

<施工範囲>全長約85m、幅員約1.8m <仕様>水路側面:安山岩加工玉石(約350Φ)裏込コンクリート、水路底面:安山岩加工玉石(約200Φ)コンクリートに埋込、堰堤:花崗岩切石、親水広場:花崗岩切石貼及びインターロッキングブロック貼、見学デッキ:RCスラブの上、花崗岩切石貼(同材で文字象嵌)、SUS製手摺(強化合わせガラス)、案内版:H型鋼溶融亜鉛メッキリン酸処理支柱枠+アルミ複合版プリント貼

どこで購入できるか、
どこで見られるか

山形県山形市旅篭町一丁目
空間芸術研究所ブログ「竣工・御殿堰景観整備」
空間芸術研究所ブログ「御殿堰景観整備計画」
山形市中心市街地活性化基本計画のうち88~89ページ(市道霞城公園東幹線御殿堰景観整備事業)

審査委員の評価

2017年12月に竣工した山形県税理士会館の建替えにあたり、街の中に埋没していた歴史的水路「御殿堰」の存在を親水広場とともに顕在化した。ただし、戦後にコンクリートでつくり替えられた無粋な水路そのものには手を加えることができなかった。その後、歴史的水路の景観整備を検討していた山形市から、「御殿堰」の整備を税理士会館と同じ設計者に協力してほしいとの依頼があり、ついに歴史的水路の景観が復旧することになる。温暖化の影響による気候変動が自然災害を拡大させているが、その根源には急激な都市化によって人と水との関係が希薄になっていることが指摘されている。地域独自の価値を取り戻すためには、本プロジェクトのように身近な生活の中に水の存在を再生することが大切だ。街なかの水路復旧という小さな取り組みが、市内のあるいは国内の大きな流れにつながることを期待してやまない。

担当審査委員| 伊藤 香織   五十嵐 太郎   西村 浩   平賀 達也  

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