ニュース 2007年度記事


[2007年度グッドデザイン賞]内藤廣審査委員長からのメッセージ (2007.04.02)


Gマーク制度は「グッド・デザイン商品選定」から「グッドデザイン賞」へと名称を変えながら50年の齢を重ねてきました。これを機に、主催者である日本産業デザイン振興会は、新たな文化発信の中心となる東京ミッドタウンに拠点を移しました。さまざまな意味で今年度はグッドデザイン運動再出発の年となります。Gマークの半世紀に及ぶ歴史を引き継ぎ発展させていく責務を委員長として担うことになります。

2006年わが国の人口は増加傾向から減少傾向に転じました。この人口曲線の在り方は人類史上未体験のものです。われわれはこれまで誰も体験したことのない時代へと突入しつつあります。新しい社会、新しい産業形態、それに伴う新しいデザインの在り方が求められる所以です。

これに向けて分野横断的な新たなる産業のパラダイムを創出しようとする試みが胎動し始めているのを感じています。一次、二次、三次産業は、それぞれが目的に応じて結びつき、新しいパラダイムの中に再編再構築されていくでしょう。この新たな枠組みの中に適応しうる産業こそが次なる社会を牽引するはずです。旧来の産業形態を包含し、横断的にスーパーバイズする新しい産業の姿をあえて「四次産業」と呼び、これまでのデザインという言葉を「四次産業のためのデザイン」に向けてバージョンアップするべきだと考えています。

この新しい産業形態を創出するためには、デザインは表象であることを超えて、モノ作りの基盤に到達する深度を獲得する必要があります。また、分野の垣根を飛び越えて、必要とされているものを結びつける機動力と融合力が求められます。このバージョンアップが実現すれば、デザインは新しい結合を促す必須の触媒となり、新産業全体のコアに位置づけられるはずです。

グッドデザイン賞は、デザインという価値をめぐる応募者と審査委員双方の研鑽の場であり、デザイン活動を称揚し、優れたものや隠された努力を顕彰する貴重な場です。また、変わらぬ価値と変わっていく価値、変えてはならない価値と変えねばならない価値を議論し、見定め、新しい社会への動機付けをする社会的な装置でもあります。

この賞がわが国デザインのより強固な礎となるよう、関係各位に一層のご理解とご協力をお願いするとともに、これまで以上に多くの優れた応募作品を寄せていただくことを期待します。

 

2007年4月2日

内藤 廣
建築家・東京大学 教授

 

早稲田大学理工学部建築学科卒業。同大学院修士課程修了後、フェルナンド・イゲーラス建築設計事務所(スペイン)、菊竹清訓建築設計事務所を経て、1981年内藤廣建築設計事務所設立。代表作に「海の博物館」「安曇野ちひろ美術館」「牧野富太郎記念館」「島根県芸術文化センター」など。2001年からは東京大学社会基盤学科で教鞭をとりながら、土木・建築・都市の枠を越えて、建築設計からまちづくりまで様々な領域で幅広く活動中。
photo : Rolad Hagenberg