中西元男 対談バックナンバー

 
 

第9回(2000.10.31)


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船曳: 中西さんと船曳さんおっしゃるとおりですね。私もA-POCの可能性に大きな魅力を感じます。A-POCは個別対応と量的対応を兼ね備えたシステムということですが、量産というのは下手をすると大量に作って大量に捨てることになりかねないところがあります。しかし、A-POCの場合、個別対応がユーザー自身によってなされるところに大きな意味があると思うのです。自分で手を入れて、自分の作品になっていたら、そうは簡単にくず箱に捨てられないでしょう。買ったユーザーがカスタマイズするのだからことで、そこに自分の愛情が付加されていくからです。

また、たぶんA-POCの藤原さんを始め現場のデザイナーたちの感覚は、いま若い世代がつくり始めているものとまったくイコールなんだと思います。それを強く感じます。ここで三宅デザイン事務所が先鞭をつけたことは、いま澎湃と起こってきているテキスタイルを中心とした若いデザイナーが裏側に潜在的に持っている意識に直結するものを感じます。

中西: Gマークでは3年間審査委員長をやらせていただきましたが、その前に施設部門を担当していた時に、金沢市民芸術村がグッドデザイン大賞になりました。ここで一つの象徴的だったことは、ほかの建築デザイン賞では決して選ばれない、つまり造形的な作品賞としては選ばれないようなものがGマークの大賞になった。そこでは新しいトライアルがなされているということ、そのトライアルの核が人間とモノとの関係性で、いかに新しい価値がつくっていけるかということに対する新しい提案があった。それを評価したということです。そのあとのブリヂストンのトランジットも、当初は、量産を目標としてつくられたものではなかったのですが、それを評価することで道を開きましたし、'99年度のAIBOも大賞受賞で存在価値を変えました。

その意味では、今年のグッドデザイン大賞に選ばれたA-POCも同じ路線上にあると私は見ています。これまでもまだ産業に資するかどうかよくわからない段階で選んで、結果から見ると産業に資する方向に動き始めたのです。大賞の受賞がその動機づけになっていった。そういう流れで見ても、A-POCが今後産業に資するものに育つかどうか、まだよくわからない状況にある。その部分に「なぜA-POCなの?」という疑問をお持ちになる方もおられるのではないかと思います。

船曳: 私はその「先がわからない」というところに、次のデザインを育てていく可能性があると思っています。最後まで大賞を争ったミズノのファーストスキンもすばらしい商品であることは疑いようがないのですが、デザインをつくっている方、それにかかわる企業の方々へのインパクトという点で、頭を打たれたようにはっと気がついて、まったく違った方向に走り始めるというほどの迫力がなかったように思います。
中西: 中西さん今年大賞候補に選ばれた8点は、同列では比較のしようがない。同じ基準で比較することができない。でも、同じ視点から優劣を決めるという偏差値的なものの見方と違って、創造性や個性は差違性に価値があるわけですから、多次元尺度的にいろいろなものが出てき始めて、それが大賞候補になったのは、いい傾向だと思います。

いま、お話に出た、ミズノのファーストスキンはスポーツギアで、しかも記録を出すというところですばらしい成果を上げています。しかし、スポーツの世界ではかなり画期的なものであり、スポーツ人口から見れば大変なボリュームゾーン商品になるかもしれないが、汎用品にはなりえない。

僕は松下のユニリッチも非常に評価したんですが、これはエイジレスバスとかいろいろな形でこれまでも各社トライをされていますが、その中で一段上の完成度の高さがある。この完成度の高さというのは、以前G マークでユニバーサルデザイン賞を受賞した座・シャワーを組み込むことができるとか、いろいろなものの集積の結果の成熟度である。しかも、機能や使い勝手から考えて、1坪ではなく1.25坪にすることに踏み切った。それによって日本の住宅モジュールの中に組み込むことが難しくなり、市場性を狭くするかもしれないが、逆に人間性という価値を取って熟成度を上げた。そういう点でユニリッチは非常に高いレベルに仕上げられている。それは積み上げによって完成している。

船曳: もしA-POCがパーソナルユース商品部門のほうに出ていたら、金賞を取らなかったかもしれない。製品の完成度、現在の市場性ということで評価すると、まだまだという感があると三宅一生さん自身が思っておられるのではないか、と。新領域デザイン部門だったから、新しい生産方式、新しいデザインの切り口をつくりだしたというところで、評価されたのだと思います。

三宅デザイン事務所の藤原さんに聞きましたら、まず製品のイメージがあり、こういうものがほしいなと思って探したところ、ストッキングと下着のシャツが同じようなものではないか。あれはもともと袋状に織機から出てくるものだから、これでいけるんじゃないかと思ったそうです。それは非常に簡単なことで、コロンブスの卵みたいなものです。布、布と考えるからいままで思いつかなかったけれども、最終的に出てきた洋服と考えれば、全然違うジャンルで使っている織機に目を向けていいわけです。デザインセンスのある若い人は、出来合いのデザイン、決まったブランドではなく、もともと非常にフレッシュにモノを使いこなしているということがあります。そのへんの空気を反映させて、しかもそれを実際の生産の中でどうしていくのかという技術を追求している。私はコロンブスの卵のように感じてしまったんです。

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中西: 着るものには、大昔から基本的に貫頭衣と袈裟式衣があって、そこにパンティストッキングのような筒状衣が出てきた。A-POCのおもしろさはそれらを全部含めてしまったところにあると思います。反物に着るものが仕組まれていて、切り抜いて着てみると貫頭衣になり、ショールのように巻けば袈裟式になる。そういうものが構造的に全部含まれているという、プロダクトとしてのおもしろさがありますね。それに当然、創造性があります。

A-POCをどこで評価するかといったときに、いろいろな可能性があっておもしろいと思ったのは今までにないユニークさを持っている点です。いま船曳さんが言われたように、個人が参加できる、自分のものをつくっていける可能性まで含んで、作品的個性でおもしろい。それと同時に、これ自体、多くの人たちが賛同し購入してくれると新しい市場的価値が生まれる。いままでになかった市場をつくる可能性を持っているわけです。また、衣類からなるべく無駄なところを除いていくことを含めて、社会的な価値も持っている。
三宅一生さんというと、つい一品物の作品的な価値をみんな頭に描くんですが、これは非常にベーシックなプロダクトと言えるものであって、サインの入るような個別の作品性はない。それだけにアパレルの世界の国際間競争で、日本がこの技術を制覇することによって一つの勢力を作り出すことができる。いまは設備の初期投資からイニシャルコストがかかっているので高いものになっているかもしれませんが、量さえ出れば極端に値段が下がっていくものだと思います。ですから、産業として、製造業としてそこまで持っていけるような育て方をすることによって、いままでと違う新しい可能性の芽が日本に生まれてくるという、A-POCのポテンシャルやパワーはそこにあるのではないかと評価したんです。

船曳: 日本のストッキングは世界最高ですから、日本の織機の技術レベルはすごいものがあるのでしょうね。A-POCから、ほかの大賞候補に戻りますと、どの候補も日本の技術力に裏打ちされて、世界に出ていく可能性があるように見てとれました。
日立の手話アニメーションソフトは現在のところ日本語に対応する手話で、必ずしも異なった言語間で共有できる国際手話ではありませんが、相当な開発努力を必要としたソフトであることは間違いありません。いずれ「自然言語」である「日本手話」も開発されていけば、共通性の高い韓国や台湾のソフトもできると思うし、何より公共放送などですぐに利用してもらいたいほど社会性が非常にあるものですよね。
ミズノのファーストスキンは、世界最高の開発力を持っていることが証明されて、狭い用途かもしれないけれども、グローバルな競争力を確立した。
ナショナルのユニリッチに関しては、こんなに細かく作り込んでいくのはたぶん日本だけでしょうね。でも日本の浴室のスタイル、単に体を洗うだけではなく、そこでリラックスするというのは、欧米でも徐々にその方向になりつつあって、もしかしたらこれも形を変えて世界に出ていく可能性があるかもしれない。
岡村製作所のスツールは、東南アジアのいろいろな企業にも、こういうものもあるんだとすごく勇気を与えるのではないかと思います。また、この値段だったら、グローバル市場においても競争力があります。
またホンダのシビックについては言うまでもなく、日本市場以上に北米ですでに潜在的な市場を獲得しています。日本の文化に根ざした、小さくて高機能な製品開発では、今後も世界に負けることはないでしょう。
大賞候補とはなりませんでしたが、ワーキングユース部門金賞のミツトヨの三次元測定機は、応募シートにわれわれは世界市場を考えますと書いてあるくらい、世界の水準を抜いているという自負を持っている。

ともかく今年度、去年もそうかもしれませんが、Gマークというのは、単にデザイン村で格好いいデザインをつくりました、どうですかと持ってくるというよりは、世界のマーケットに日本が打って出ていくときの一つの関門みたいなものになりつつあるという気がしました。

中西: これまでのデザイン史でも、いまのインターネットでもそうですが、アングロサクソン系つまり、英語が主流になっていて、それからはずれるものはなかなか先端に行けない。いまの話にありましたように、手話アニメーションを高く評価したいと思うのは、これは投資額から考えて小さな会社ではできないことです。日立がよくやってくれた。この対象になる人は210万人とか非常に少ない数であるにもかかわらずトライアルしたのはすごいことだと思います。
これ自体は日本国内を対象にしてつくられたかもしれませんが、たとえばタイプライターは26文字だから非常に普及したけれども、漢字文化圏では手書きでないとできなかった。それに対して、日本人がワープロを発明して、いまやその機能がパソコンに組み合わされるかたちになっています。そういう考え方でいくと、手話アニメーションは、たしかに英語圏からは出てこないものだったけれども、日本がつくって、他の言語圏で使っていけるような芽を生みだしたという点で、大きな可能性を持っていると思います。世界中にはいろいろな言語があるし、英語は国際語になっているけれども、英語を国語としている絶対数は少ないわけです。
また、ボーダレスになればなるほど、片方で固有のアイデンティティを大切にしなければならないという発想も出てきているわけですから、それは残しながら、どこかで共通項、あるいは弱者に対してそういうことができる価値をつくり出したという意味で、手話アニメーションも評価すべきだと思います。
ただ、これはデザインなのかといわれると、技術の産物なのかもしれない。もちろんデザインでも評価すべきだと思いますが、もう少し複合的なものだと思います。でも、考えてみるとデザインはそれだけ複雑系になってきたり、あるいはデザインという分野がノンリニアな状況になってきている一つの象徴だとも思います。
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船曳: A-POCにしても、今のお話にでてきた手話ソフトにしても、新領域デザイン部門に応募されてきたものです。今年度のGマーク全体を振り返ってみると、新領域デザイン部門が非常に興味深かったですね。
中西: いまは世の中が大きく変わっている時代だから、どの領域に入るかよくわからない産物が多い。そういうものをなるべくデザインジャンルに取り込んでしまおうというのは一つの戦略として当初から考えていたことです。昨年度テーマ賞を設けて、テーマ3賞ではない新しいデザインテーマもそこに求めてみたら、いろいろな応募がありました。たとえば岩手県の病院の遠隔診断システムです。岩手県は広い県ですし、雪に閉ざされますから、中央のコントロール装置の所にお医者さんがいて、そこに患者の情報を送ることによって指示を仰ぐことができるというネットワークベースの診断処置システムが応募されてきました。果たしてこれがデザインかと思いますが、彼らにしたら、どこに出したらいいかわからない、でもデザインとして評価してもらいという思いから応募されてきたわけです。

中西さんこれはあくまで一つの例ですが、それが一般のデザインに対する今日的認識の兆しであるとすると、これはテーマ部門ではなく、新領域デザイン部門と名前を変えるべきではないかというのが、今年の春、議論をしてきた中で出てきたネーミングです。
この分野で対象としたかったのは次のような3点です、まず一つ目はコンピュータソフト、バイオのような21世紀の産業につながっていくような領域、時代の先端をデザインの中に入れていきたいという部分です。次に、いまある領域を、これもデザインだよと横に広げていきたい。エコロジーデザイン、ユニバーサルデザインとなると、デザイナーだけでは解決できないような領域のものがたくさんあります。たとえば今年出てきたものでは、高知県の「たまごの割れない道づくり」がありますが、これはデザイナーの力だけでできたかといわれるとそうではない、ある種の市民運動と言えます。こうしたデザインを横に広げていくような部分が二つ目です。三つ目に、われわれは過去の優れた技術的資産、あるいはその土地々々での地場の殖産振興の延長上の所産を持っている。たとえば各地の土産物、工芸品、特産品と呼ばれるものです。そういうものに現代デザインの光を当てることによって、新しい価値を生みだし蘇生させることも大切で、それが地域振興、地場振興になる。今年度の中小企業庁長官特別賞を受賞した淡路の山田脩二さんの瓦もその一つだと思います。瓦は屋根だけに使うものではないというので、いぶし瓦の材質感や趣きに有名な建築家の人たちが着目して、敷き瓦や飾り瓦など非常に広い範囲に使うということになり新しい素材分野や結果としての景観を生み出しているわけです。こういう可能性もデザインの世界にはありうるわけです。

そういうものを全部ひっくるめて、デザインという切り口から範囲を広げていったというのが非常に重要な着眼で、それを新領域と呼ぼう、一応そういう仮説は立てました。が、むしろ応募者が自由に新しいデザイン領域を提案し、つくっていってくれればいいということで、一つの石を投げかけたわけです。初年度ですから、応募される方もちょっと迷われたかもしれませんが、そこはできるだけ審査委員推薦で補うかたちを取ることによって、新領域はこういうものかとある程度見える状況になってきたのではないかと思います。

船曳: 今年度新設されたデザインマネージメント賞も、委員長としてはいくつかの軸がある中の一つとお考えですか。
中西: 普通デザインマネージメントという言葉が使われる時は、社内のデザイン部門をどうするか、デザイナーをどうマネージメントしていくのか、デザインをつくりだしていく時にどうするのかという、内なるデザインマネージメントが多いんです。そうではなく、外なるデザインマネージメント、外に向かってデザインを生かすことによって、成功したという例が結構出てきている。しかも、そういう成果を評価するところが今までなかったので、ビジネスとしては実績を上げているにもかかわらず、評価されないままにあった。しかもそれはデザインを主軸にしながら事業を育てていったり、デザインマネージメントがうまかったために、事業的成果ができているということがありました。そうした事例を積極的に取り上げたのがデザインマネージメント賞だと思います。
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船曳: 先ほど中西さんが新領域でねらったのは、一つは産業分野としての新領域、もう一つはデザインの概念を広げると言われましたが、デザインマネージメントは後者だと思います。私自身がデザイナー出身ではないものですから、そこに一番魅力を感じるんです。ユーザーとしては、一つひとつのものの意匠的なデザインがフレッシュで完成されていたほうが楽しいけれども、それ以上に社会的な視点から見ればデザインが社会に一番のインパクトを与える部分は、デザインを起爆剤にして企業が市場に飛び込んでいくところにあると思いますし、これが、社会を動かす力になっていくと思います。そこをもっと広く、こういうこともあるよね、こういうこともあるよねとGマークの中で実例を積み重ねることによって、もっと多くの企業人の方々に気づいていただきたいということは切実に思います。
中西: 事業を起こしたり進めたりしていく時、物的品質は日本はかなり高いレベルにあります。品質の差違化、差別化のマーケティングという点ではいろいろなことが行われているわけです。もう一つは、価格の差別化マーケティングという面でも行き着くところまで行っている。それでも次々と流通革命的なこと、あるいは生産革命的なことが行われていきます。そこにもう一歩加わってきたのが、デザインによる革命だと思います。それによってイメージによる差別化、あるいはイメージで牽引をすることによって、物的成果がついていく。これは、生活文化でもビジネス上の文化でもいいんですが、文化的要素が経済的成長を牽引していく構造がありうるとするとその主役はデザインではないか、デザインによって引っ張っていく新しい事業起こし、あるいはいままで不振になっていた分野をデザインで蘇生していくことで機能させることができるのではないか。特に今年はそこに注目し、光を当てたように思います。
船曳: 今年の経験から、来年は多くの方々が新領域デザイン部門に関心を持たれて、応募数が多くなることを期待しますし、実際にそうなるでしょうね。

ところで、いま、新しいライフスタイルを提案するというマーケティングの手法が、家電も含めてどんどん増えています。そういうことでいうと、インテリアを中心として、生活に密着した産業分野で、もっともっとGマークに関心を持ってもらいたいと思います。私の周辺の分野は、Gマークという点では遅れているので、これをもっと参加させていきたい。

中西: 今までのインテリアは欧米の文化に引っ張られたインテリアで来ていると思います。それはそれで決して悪いことではないんですが、かつてフランスで日本人はウサギ小屋に住んでいるという評価があって問題になったことがありました。ところが、日本人のインテリアに対する考え方では、決して大空間になれば豊かだとは考えなかった。それはそれで一つの豊かな空間だけれども、茶室などの小さいところにいかに大きな宇宙を込めていくかということが、日本のインテリアに対する一つの特徴的な思想性だったと思います。そういう部分から考えると、日本独自のインテリアをどう育てていくのか、そうした価値体系をデザインジャンルの中につくっていくことも非常に重要だと思います。

何年前でしたか、韓国の最初の文化庁長官である李御寧さんが『「縮み」志向の日本人』という本を書かれて、僕にはあれが非常におもしろかったんです。日本人は何でも小さくして、それによって世界を制覇する。例えばソニーが強くなったのは、すごく小さいところに高機能を与えてきたからです。そうした手法を取り入れる時に欧米型のインテリアとは違う日本型のインテリアの新しい価値、日本の空間に対するアイデンティティに光を当てて、新しいインテリア領域がつくられていくということがあっていいと思いますし、日本人がつくりだしていかないといけない部分だと思います。

船曳: 船曳さんその意味で、日本のトラディショナルなインテリアをやっているところにもぜひGマークに出てきてほしい。というのは、Gマークに出てくると全然違う光に当たるわけです。日本のインテリア、家具産業にいると、考えは先細っていくだけです。いままでとは180度違うと思えるような世界に出ていった途端に、見え方が全然違ってくる可能性があります。というのは、Gマークはインダストリアライゼーションの権化みたいなところがいままであったのですから、クラフト的な部分が突然そちらにパーンと振られた途端に、もしかしたらそこからすごいインパクトをもらって、大きなヒントになる可能性もあるわけです。もちろんユーザーの立場からGマークに生活分野全般を拾っていただきたいということもありますが、逆に産業のほうからいっても、Gマークのほうに出ていかなければ、自分たちの中での自己開発力が出生れてこないのではないかということが、もっと意識化されるべきです。
中西: A-POCですら、当初はGマークなどとは無縁だと思っておられたわけです。新しいものでもそうですが、地方で地場産業的に行われているものの中でも、Gマークはうちとは関係ないよと思っている人がたくさんいる。Gマークが日本のデザインインフラだったら、どこの部分でデザインとかかわろうがみんな関係があるよということで、評価をしてあげることによってレベルを上げていく、あるいは新たな競争の場をつくることによってレベルを上げていく。そういうことが行われる仕組みとしてGマーク制度があるようにしていかないと駄目だろうと思います。この部分での広報活動をどうしていくのか、Gマークのコミュニケーション戦略は、手を変え品を変えやっていくことが必要ではないだろうか。

今までの歴代の審査委員長の長老会、そういう方たちにもGマークはどう変わってきているかをお知らせすると同時に、そういう方たちの意見もできるだけ入れていけるような深みも必要だと思います。今の日本のデザイン教育でも同じですが、これ以上、デザイン学校を増やしてもデザインがよくなるわけではない。それよりはデザインの発注者・理解者のデザイン教育を充実させていく。もう一つは、その使い手である生活者・市民のデザインに対する目を育てていく、あるいはそういう人がどんどんデザインに興味をもって取り組んでくれる。デザインの市民教育みたいなもの、いや、教育というよりは勝手にどんどん学習してもらいたい、そこの美的快適おもしろさを楽しんでもらいたいということだと思います。

Gマークを核に据えながら、デザインの社会的・時代的価値のパラダイムをきちっとつくり直す。民営化して3年、方向は見えてきたわけですし、財務的にも成り立つという目途が立ったので、ここでもう一度Gマークのパラダイムをきちんとつくり直すということが行われるべきかと思います。

(2000年10月25日 東京・渋谷区のPAOSにて収録)
  ●中西 元男
PAOS代表、2000年度グッドデザイン賞審査委員長

●船曳 鴻紅
(株)東京デザインセンター 代表取締役社長
2000年度グッドデザイン賞審査副委員長

  PAOSのHP:
http://www.paos.co.jp/

東京デザインセンターのHP:
http://www.design-center.co.jp/

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