中西元男 対談バックナンバー

 
 

第3回(2000.4.28)


連載第3回目のMOTOO'S VOICEでは、グッドデザイン賞審議委員会により3年連続で審査委員長に選出された中西元男氏に、2000年度グッドデザイン賞事業の所信表明を語っていただきました。
(編集部)
中西元男
中西元男 PAOS代表
1999年度グッドデザイン賞
審査委員長
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  今回、審査委員長として3年度目をお引き受けするに当たって、民営化以降進めてきてなお中途半端な段階にあるいろいろな変革作業を少しでも仕上げて次の方にバトンタッチしたいと考えています。 昨年から「グッドデザイン・イズ・グッドビジネス」をグッドデザイン賞(以下、Gマーク)事業のスローガンとして掲げています。これは、作品・作家主義のデザインアートに対して、デザインビジネスや産業をつくりあげていくデザインインダストリーの先兵にGマーク制度がなって欲しいということです。受け手の側、つまり消費者、生活者にデザインが幅広く普及していく、受け入れられていく、一つの象徴記号がGマークであるというかたちになればいいなと思っています。
  こう考える背景は、日本の物欲型経済成長が崩れて、そのあといったいどうなるのかといった時、今後、真の意味の成熟化社会をつくっていかなければならない中、成長の軸になるのは、広い意味での文化成長、つまりデザインという名の生活文化を軸とした成長であると考えています。そういう点から考えると、いままでのGマークに対する考え方や基準を動かしていく必要があります。当然それは審査方法等にも影響してきています。
  Gマークを決める過程で、いままでと一番大きく変わったことは、先ほどの前提に沿って考えると、デザインがカバーする領域、あるいは影響領域を広げていこうという「拡デザイン」の姿勢が挙げられます。
  例えば地域の産業、あるいは伝統産業の育成とデザインの結び付きでとらえていくと、評価基準もある程度多軸化せざるをえません。だから価値尺度も何本かになっていく。東京の先端尺度ではGマークの水準に達していないかもしれないけれども、地域産業として育つ可能性が高いといったときには、励ましの意味も含めてGマークに選ぶこともあっていいのではないかと考えています。
  あるいは、これまでのGマークは総じてモダンデザインの延長線上にありましたから、合理的で無駄のない形状が「Gマークスタイル」と受け取られてきた傾向がありました。それはそれで重要なことですが、別に花柄であっても、多少装飾性が強くても、生活者に快く受け入れられ美的生活水準を向上させるものであったり、ボリュームゾーンにおいて重要な価値をもつものであるということであれば、積極的に評価していこうではないかと考えています。この評価の多軸化は、いままでとは大きく違うところだろうと思います。
topへ もう一つ新年度で一番大きい特色は、テーマ部門という呼称をやめ「新領域デザイン部門」を設けたところです。ネーミングは主催者ともディスカッションし、苦労したところです。これまでもエコロジーデザイン賞、ユニバーサルデザイン賞、インタラクションデザイン賞といったテーマ賞がありましたから、何となくこの3賞とテーマ部門の関係があいまいだったところをハッキリと総括りで「新領域」と広く捉えたところに特色があります。
  昨年度のテーマ部門では、応募者側で独自にテーマを定めて出してくるケースが多かったのですが、中には審査委員であるわれわれがみて、こんなものまでデザインに含めて考えている人がいるのかと、びっくりしたという経験もありました。これは今後への非常にいい芽ではないかと思います。
  いまのような変革の時代は、どの分野にも属さない、新しい事象がたくさんあります。目に見えるデザインもあれば、目に見えないデザインもある。そういうものをこれもデザインだよといって、デザインの中に積極的に取り入れていってしまうことがデザイン・イノベーションです。いろいろなことを含め、社会的あるいは生活的価値のデザインの領域でとらえていくことが重要と考え、これまでやってきたわけです。
  事実は小説より奇なりといいますが、現実は何よりも進んでいる。街は商人の教師である、あるいは街はデザイナーの教師であると言ったほうがいいと思いますが、実際のところ現実の方が進んでいるケースは結構ある時代です。ですから、そういう先端状況をどんどんGマークに出してもらい、積極的に評価していこうというのが、新領域デザイン部門です。
中西元男ジョージ・ケペッシュが『ニューランドスケープ ―造形と科学の新しい風景』(ジョージ・ケペッシュ編、佐波甫+高見堅志郎訳、美術出版社、1966年)という本の序文で、「ここで使っている言葉は英語の辞書に載っているけれども、意味は辞書に載っている意味ではない」という意味のことを書いていました。つまり全く新しいことを示したいために使っている言葉だから、勝手に既存の解釈をしないでくれということです。同様に、いまがデザインにとっても過渡期だとすると、あまり領域を自ら限定するようなことはやりたくない。いわゆる拡デザイン、デザインの広がりという領域をできるだけ許容・受容していきたいという意味合いを込めて「新領域デザイン部門」が設けられたことが、2000年度のグッドデザイン、20世紀の最後のグッドデザインの特色になっているところかと思います。
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