中西元男 対談バックナンバー

 
 

第2回(2000.3.28)



前号より連載を開始した"MOTOO'S VOICE"では、'98、'99と2年間にわたってグッドデザイン賞審査委員長を務められた中西元男氏に、グッドデザイン賞事業の理念や方針を、受賞企業関係者との対談などを交えながら語っていただこうと考えています。
本号では、前回ご紹介のあった家電量販店「コジマ」の小島章利氏と、コジマと関わりの深いデザイナー、坂本廣樹氏をお招きして、企業成長とデザインについてご対談いただきました。
(編集部)
坂本廣樹 小島章利 中西元男
坂本廣樹
Graphic man アートディレクター
小島章利
株式会社コジマ
専務取締役
中西元男 PAOS代表
1999年度グッドデザイン賞
審査委員長
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中西: 株式会社コジマ(以下コジマ)の生活家電シリーズ「Fresh Grey」が1999年度グッドデザイン賞(以下Gマーク)を受賞したことは、この賞の歴史に新しい一ページを開いたものと考えています。
それは、川下産業である家電量販店自身の企画がGマークを受賞したという例が全くないからで、個人的にも非常に興味をもっています。
今回のインタビューでは「Fresh Grey」シリーズ開発の背景や小島専務のデザインに対するスタンスなどを中心にお話しをうかがいたいと思います。まずは、開発の経緯について簡単にお願いします。
小島: 「Fresh Grey」の企画の根底にあるのは、私自身の体験なんです。大学に入学したときに自分の部屋の家電は薄いグレーで統一しようと思ったんですが、欲しい商品はメーカーも色もばらばらで統一できなかった。それでも、できるだけ部屋の中に溶け込むようなものを揃えようとしたのですが、叶わなかった。これが原体験として根底にあるんです。このシリーズの企画意図は、お客様が自分の部屋を自分の好きなようにイメージしてつくる中で、その空間に溶け込むというものです。つまり、お客様が空間をデザインをするための商品という意図でした。
坂本: 小島専務はデザインに興味があるだけでなく、「これからのコジマの柱はデザインである」という認識をお持ちのデザインの良き理解者なんです。小島専務とは8年来のお付き合いですが、「Fresh Gray」が始まる際に「いろいろな企業の電機製品を薄いグレーで統一することはできませんか」と漠然と相談を受けたんです。ふつう企業のトップはそうしたこだわりは少ないものなので感心させられ、デザイナーとしての使命感に燃えて「一口にグレーといっても大変ですよ」というところからスタートしました。
ここで行おうとした、商品群を統一的なイメージでまとめることはCI(コーポレート・アイデンディディ)的なデザインですよね。そこで、CI関連の書籍を小島専務にひととおりお見せして、方法論としてこの方向でいけそうなことを理解いただけましたし、僕としても実現できそうな手応えがつかめた。手法については問題はありませんでしたが、色の決定には、けっこう時間がかかりました。実は「Fresh Gray」といっても、ロゴ自体はブルーですし、グレーを助けるもう一つの色としてシルバーを使っているんです。このシルバーは、新しいエンバイロメンタルなデザイン、エコムードになっているときにもとてもいいんです。いろいろ話し合った結果、グレーのシステマティックな色彩を打ち出そう、これは商品になるよということになったんです。
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中西: お話をうかがっていておもしろいのは、ふつう経営者が自分の意図や好みを反映させる際には、一点豪華主義あるいはワンポイント型が多いのですが、コジマさんの場合は最初から面的なとらえ方です。あるいは環境的なとらえ方といってもいいかもしれません。しかもそれが学生時代の原体験から始まっているというのも、きちっと根があっておもしろい話だと思います。
「Fresh Grey」は、96年に3メーカー・7アイテムほどでスタートし、99年シリーズでは11メーカー・33アイテムにまで規模を拡大して展開しているとうかがってます。また、売上げもスタート当初の約8億から、現在は10倍の売上げを目指しているそうですね。
小島: 前期が60億円で、来年の12月ぐらいまでの今期の目標が80億円です。
この数字を見ると当社の売り上げにおけるこのシリーズが占める割合は思っていたよりも上がっています。春発売の商品は、3カ月から6カ月くらい前からメーカーと話を始めてモデリングしていきます。この春一番売れるであろう商品を商談の中から計画して、それらの色を統一するというシンプルな方法でやってきました。昔は春のシーズン売上げの1割にも満たないシリーズからスタートしましたが、いまはそれが半分ぐらいまで達している状況で、これは今後もどんどん上がっていくと思います。
私どもとしては、あくまでも流通に徹したいと思っています。ある意味ではお客様の代表として、お客様に奨めたい商品をセットアップして、異なるメーカーのアイテムの色合いを統一してお届けするというスタンスで考えています。一番いい商品をお買い求めやすい値段帯に設定するわけですから、将来的にも、この分野の商品の割合は当然上がっていくだろうと思います。
中西: アイテムによっても違うのでしょうが、どれくらいの数量を発注されているんですか。
小島: 商品によって違いますが、だいたい5万台、理想的には10万台ぐらいのペースで動かすことだと思います。もちろん競争はありますが、当社で計画的に大量発注して買い取ることによって、低価格を実現しています。最もコストパフォーマンスが高く、品質が良く、機能が優れている、そしてデザインも良い、これなら売れるという商品を「Fresh Gray」にしていただく。つまり、その 分野で一番売れる商品を「Fresh Gray」にするということです。品質が悪ければ価格が安くても売れないし、品質がよくて価格が安いのが一番売れる商品ですから、その商品を「Fresh Gray」として統一して出す。
中西: これはシリーズ商品としてもうまい着想ですね。「Fresh Gray」というブランドの中身は新しいデザインの商品に入れ替わっていくが、イメージ的には累積されていく。コジマに何度も足を運ぶ人にその売り場が認知されれば、目的買いが増え、そういう人がどんどん出てくれば、このブランドが育つということにつながる。定番商品で売れるものをエバーグリーン商品といいますが、これはその意味ではエバーグレー商品ですね。(笑)
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