中西元男 対談バックナンバー

 
 

第2回(2000.3.28)


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中西: 小島さんと坂本さんが出会われたころは、コジマは量販店のランキングでいうとどれくらいだったんですか。
小島: 5番手ぐらいでしたが、ここ3年は日本一です
中西: 5年ぐらいの間で1番手になられたということですね。デザインの力によるところも大きいでしょうが、やはり、デザインを活用する資質が経営者にあったということだと思います。デザイナーは基本的に提案屋です。提案はしますが、意思決定者が採用しなければ、紙に書かれたアイデア、あるいは机上の空論になってしまいます。それを認めて、採用して、生き物にしてもらうには、「目のある」経営者と出会わなければならない。
坂本: 小島さんも一種のデザイナーなんです。というよりはむしろクリエイターですかね。
中西: 市場創造をしていくという意味合いでのクリエイターだと思います。私も講演を頼まれて地方によく行きますが、地方へ行けば行くほど、都会のような大クライアントはない。すると、県庁や市役所が最大のクライアントです。そういう傾向があるなかで、地場の企業と出会って、その会社を育て上げていくかたちで自分も育っていく。そこでいいクライアントができあがっていって、自分にとってもいいビジネスになっていく。その意味では、これは坂本さんにとっても、デザイナー冥利に尽きる仕事ではないですか。
坂本: まったくそのとおりです。僕は大学の専攻がインダストリアル系だったので、立体にも興味があって家具もデザインするんです。グラフィック以外にも幅広くやっていたので、コジマという企業とフィットするんでしょうか。
個人的には、世界中のいろいろなデザインを見るにつけ、グラフィックだけに頼ってしまうことに対して考えてしまうわけです。ましてや地方にいると、自らの専門を規定して、それをまわりに認識されてしまうことに危機感を感じます。細分化されてしまうと自分の身が危ない。だから、トータルデザイナーを目指さざるをえない。それも中途半端では見てももらえないし、グラフィックの世界でも評価されないとだめです。めちゃくちゃ大変な仕事ですが、必ず見てくれる企業、あるいは人がいる。
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中西: ところで、「Fresh Gray」シリーズがGマークを受賞してよかったと思うのは、現在のGマークが目指している方向と一致している部分が多いからです。
いままで日本の社会にあった上から下への発想、大企業やお役所がつくったものをみんなが受け取って使うという発想。産業的にいっても、川下が川上や川中を動かして何かをやるという例は少なく、上から降りてきたものをいかに売るかということだった。そこが構造改革されつつあり、生活者の視点から考えていくというところが非常におもしろい。これがひとつあります。
もう一方で、日本には美術館のパーマネントコレクションに選ばれるようなすばらしいデザインをされるプロダクトデザイナーや、ポスターをやられたら世界一と呼べるようなグラフィックデザイナーは大勢いらっしゃいます。それは世界でも最も多いかもしれない。ところが、デザインインダストリー、産業としてデザインをとらえる、もっとボリュームゾーンとしてデザインをとらえるという点から、デザインがどのくらい役に立っているか、あるいは世の中を牽引しているかと考えると、ほかの国に比べてお寒い限りだと思います。そういう点で、いま何が必要かというと、デザインインフラ、すなわち日本人の生活の中にどのくらいデザインをたくさん入れていくか、あるいはそれを楽しむ生活のための消費構造をどうつくっていくかというところに、Gマークの役割を求めるべきではないか。そうした意味で、「Fresh Grey」の切り口はわれわれにとって歓迎すべきことであり、こうした考えが具現化されてきているというのは、素晴らしい一致だと私は考えています。
坂本: 小島さんが時代の先駆者のように思えてならないんです。そういうコンセプトを投げかけられたのも、デザイナーとして初めての経験でした。
昨年からつくりだしたCMの総責任者も僕に任せていただいて、ほかにもノベルティの印刷ポスターもB全とB倍判、あとディスプレイといろいろありますが、そういうものにかける労力を厭わないし、デザインにお金もかけます。この行動力には敬意を払います。
中西: 見えていない部分に相当投資をしておられるようですが、デザインやイメージにお金をかけるということは、経営者の判断として難しい。投資効率の計算できないところにかなりのイニシャル投資をしなければいけないという問題があります。それについては、どうお考えですか。
小島: 経営者にとっても、自分のイメージしたものを確実につくってくれるデザイナーの方、仕事をしてくれる方を見つけるのは非常に大変なことです。これはデザイナーの力量にもよるのですが、そのデザイナーの企業に対する愛情にもかかわっていて、その会社を本当に大きくしたいと思ってくれているデザイナーは、こちらが100を言えば110とか120の答えを常に返してくれます。しかし愛情がない場合には、150の答えでも、その150はうちの会社にとっての150じゃないんだよ、というようなことになったりする。やはり企業ごとにデザイナーに期待しているものは違っていて、それに応えてくれるデザイナーを見つけるのが大変です。それを実現してくれることは、非常に大きな価値があると思います。
正直言って、こちらが100言って、答えが80になったり70になるのであれば、発注する意味が全くない。そこへ対価を払う気はありません。うちは商品をローコストでお客様に届けるためにやっている会社ですから、1円たりとも無駄遣いする気はありません。お客様にとってプラスになることを実現するために、コストに関して非常にシビアな世界ですから。
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中西: デザインを経営の中に取り入れて成功している企業というのは、お互いの能力の問題もあるし、相性の問題もあると思いますが、いい巡り合いがまず第一歩ですね。 もう一つは、経営者がいい刺激を与えないと、デザイナーは良い仕事をしない。たとえば100の能力を持っているデザイナーでも、注文さえすればいつも100の能力が出てくるわけではない。その人が「流し仕事」をやるとすぐ50とか60になってしまう。100の能力を持っている人に刺激を与え触発し、使命感を持った仕事をしてもらうと、それが130になり150になって、それがそのデザイナーの次の力になっていく。こういうスパイラルを描く関係がクライアントとデザイナーの一番いい状態だと思います。そういう点で、すばらしい関係ができあがってきているようですね。
坂本: 僕の仕事の価値を認めていただいていることを知って非常にうれしいですね。「デザイナーの世界は実力主義ですよ。売れるものをつくったり、いいプロモーションをしないと、周りを見てしまいますよ」と小島専務に言われてきましたので、それに応えようとして今がある。僕としてはニュートラルに、ナチュラルに、デザイナーとしての自分の仕事に対する使命感を強く持っていようと心がけてきたつもりです。
中西: 日本というのは明治維新以来、どんな階級から出てこようと力があれば伸びていける実力主義でつくられてきたんですが、それがだんだん形骸化してしまって、本当のその人の力がわからなくなって、一流大学、一流企業、一生安泰みたいなことになってしまった。そうした一流という幻想が崩れたいま、力があって伸びてきている会社が本当の一流企業だと思います。デザイナーの世界でもそれは同様です。そういう意味では、この混沌とした、ある意味での大競争時代となってくると、ますます実力主義の世界になってくるから、いよいよおもしろいなと思います。私は外から見て、コジマさんの伸びや流れにはすごく興味を持って眺めているし、この勢いを失わずにこれからもやっていっていただきたいと思います。

私はこれまで約30年の間に、いろいろな業種、業態、業容のクライアントの仕事を見てきました。数にして70社、関連会社を入れると100社ぐらいを手掛けてきました。この間の一番の変化は、最初のころの日本の企業では、数字が読める「数の人」でないとなかなかいい経営者になれなかった。そのうちに大集団を先頭で引っ張っていくために、ロジックが立って、社内外を説得して引っ張っていける「理の人」が必要になった。バブル期以降、非常に大きく変わったのは、成熟化社会、高度情報化社会のなかで非常に多くの情報からどれを選ぶのかという「目の人」が重要になってきたことだと思います。いまの時代はそうだと思います。
さらに、これからのことを考えると、福祉の問題、環境の問題、ある意味では環境愛、自然愛という「愛の人」という軸が出てきている。そういう点でいうと、福祉の問題については、個人的な見解でけっこうです、小島専務はどのようにお考えでしょうか。

小島: 私たちは家電製品を扱っており、福祉に対しても非常に重要な部分を担っていますので、当然積極的に考えていかなければならないし、またそうしたいと考えています。ただし、お客様が欲しいと思う商品をメーカーの商品の中から奨めるというやり方の延長線上でやれるものではないとも考えています。延長線上にあるものならばすぐにやれる。たとえば健康に関しても、健康な人がそれを維持するために使う商品であれば、比較的スムーズに入っていける。
ここから一歩奥に入って、介護を含むようになると、いまくらいの心構えでやるのは危険です。それをやるには、私たちももう少し体力をつけなければいけない。体力というのは企業の資本的な部分もありますが、加えて心構え、社員教育などが伴わないと踏み込めない。ここは自分たちでやれる部分をその場、その場で考えながら、確実に積み重ねていくしかありません。
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中西: 企業が発展しつづけるということを、どの経営者も考えておられると思います。そのなかでどういう方向に発展していくのかは、初期は量的拡大だけでよかったが、次の段階に入ると質的拡大、あるいは社会的価値をどのくらい提供できるのかというところに行かざるをえない。この問題はこれから、リーディングカンパニーとしてのコジマさんにも出てくるだろうと思います。
小島: 冗談めきますが、冷蔵庫がなければ、お父さんはいまだに会社での仕事ではなく狩りに行かなければならなかっただろう。洗濯機がなければ、お母さんは川に洗濯に行っているだろう。テレビがなければ、地方に住む人の洋服は都会の人とは違っているだろう。ものが生活様式を変えてきたわけです。そしていまはパソコンによって、高度成長期の生活様式の変化とはまた違う労働様式の変化が起こっている。人間の能力が拡大されつつあるわけで、私たちはそうした産業の中にいるという誇りを持ってやっています。日本の家電メーカーさんは、生活や労働を支えるものを時代に合わせてずっとつくり続けておられるわけです。それらはちゃんと届けられなければならないわけですから、私たちの責任は重いと感じています。
中西: お話をうかがって、単にメーカーがつくったものを売るだけではなく、提案型のマーケティングや開発をされており、そうした企業姿勢から「Fresh Gray」シリーズも出てきたということが、よく理解できました。 ファッション産業での顕著な傾向として、昔のハイファッションから、ギャップやユニクロといったベーシック衣料にシフトしてきています。こうした傾向の中、コジマさんもこれだけの店舗をお持ちなのですから、日本人の美的生活水準の向上という一つの理想へ向けていろいろな企画を提案していただき、それによって業績を上げていっていただきたいと思います。 今日は本当にありがとうございました。

(2000年3月22日 日本産業デザイン振興会 会議室にて収録)

  株式会社コジマ
http://www.kojima.net/

Graphic man
http://www.cool.gr.jp/

PAOS
http://www.paos.co.jp/

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