川崎和男 対談バックナンバー

KAZUO'S VOICE
 


今回は2002年度グッドデザイン賞で日本商工会議所会頭賞を受賞した「八幡ねじのデザインマネージメント」のデザインを外部デザイナーとして手掛けた平野湟太郎氏をお招きし、氏のデザインに対するスタンスなどについてご対談いただきました。(編集部)

平野 湟太郎 平野 湟太郎
 
川崎和男 川崎 和男
 
平野湟太郎デザイン研究室
代表取締役
名古屋市立大学大学院
芸術工学研究科 教授
大阪大学大学院
阪大フロティア研究機構 特任教授
2002年度グッドデザイン賞
審査委員長

川崎: まず審査委員長として、「八幡ねじのデザインマネージメント」という大変な労作を応募していただいたことにお礼を申し上げたいと思います。この取り組みが素晴らしいのは、デザイナーが本来持っている本質的な役割と、全体的な統合的な企業表現といえるものが十分に発揮されて実現している点にあります。八幡ねじさんというのは、一言で言えばねじを製造されている企業ですが、詳しく見てみると様々な特徴を持っていることがわかる。それをコーポレートアイデンティフィケーション、その中のビジュアルアイデンティフィケーションという限られた範囲で提示しているわけではなく、きわめて総合的に手掛けられ、統合的に展開されている。これが特徴だと思います。

今回はこの作品について、また、平野さんのデザイン観についてもおうかがいしてみたいと思います。まず、これは作品を拝見してみて感じたことなのですが、平野さんはグラフィックデザイナーですが、グラフィックデザインと領域を決めてお仕事をなさっているわけではないと推測しています。それはこれまでに出会った方々にヒントがありそうですね。
   
平野: 私のデザイナーとしての経歴は、日本デザインセンターでサイトウマコトさんの部屋でお手伝いをしたことからスタートします。私が20歳ぐらいのときですから20年以上前の話です。この出発点でサイトウさんのデザインに対する情熱、純粋さ、デザインに打ち込んでいく力を教えていただいて、そのあと洋画家の猪熊弦一郎先生に出会います。猪熊先生がデザインされたもので、一般の方にも馴染み深いものは三越の包装紙ですね。それからコピーライターの仲畑貴志さんと出会い、仲畑さんの会社でアートディレクターとして仕事をしました。そのあと、猪熊弦一郎先生を介して、建築家の谷口吉生先生と約10年間仕事をします。

このようないろいろな人たちと仕事を共にしていくことで、デザインというのは、グラフィックデザインと分野を限定して行うものではなく、もっと広く捉えて考えていく分野なんだということが自分なりにわかってきました。平面の広告だけではなく、建築、プロダクト、パッケージなど、それらを総合的に捉えていくのがデザインであるということを教わり、その中で鍛えられてきました。一つのことだけをやるのではなく、企業やプロジェクトの全体像をつかんで、それに役に立つ仕事がしたい、それが社会への貢献につながればなおさらいい、という自分の仕事のスタンスが育まれたと言えます。私の人生にとって非常にラッキーだったのは、出会った方が、いずれもその道のトップだったということが言えると思います。

出発点にサイトウさんとの出会いがあったのは確かですが、それ以来、何のコンタクトも取っていなかったので、Gマークの審査で作品を通して20年ぶりに再会した、という感じです。サイトウさんは、20年も前アシスタントをしていた私の名前を覚えてくださっていたようで、“あいつか”ということで、サイトウさん自身も驚かれたと思うんです。

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