川崎和男 対談バックナンバー

KAZUO'S VOICE
 


今回は本年度の審査委員であり、伝統産業である和紙の分野で幅広く精力的な活動を続ける堀木エリ子氏をお招きし、Gマークへの期待やデザイナーのあり方についてご対談いただきました。(編集部)

堀木エリ子 堀木エリ子

株式会社
堀木エリ子
&アソシエイツ
代表取締役
川崎和男 川崎 和男

名古屋市立大学
教授
2002年度グッドデザイン賞
審査委員長

川崎: 堀木さんとは岐阜の美濃での「和紙あかりアート展」で最初にお会いして、それ以来、活動を拝見していますが、オリジナル和紙、壁面装飾、モニュメント、 ライトオブジェといったデザインですとか、 施工上のディレクションを手掛けられたり、一方で伝統工芸の産地で和紙制作の手法などを開発されていたりしますね。和紙といっても非常に広範囲ですし、デザイン、デザインディレクション、デザインプロデュース、デザインマネジメント、そして経営者としてマルチに活躍されている。グッドデザイン賞の審査委員長として、審査委員の世代交替を考えたときに、デザインをトータルに捉えている方が一番望ましいし、そういうことも引っくるめて審査委員をお願いしたわけです。
まずは、これまでGマークをどのように見ておられたか、そのあたりからお聞かせてください。
   
堀木: Gマークは、デザインをアーカイブしていくという点で、重要な活動だと思っていました。年鑑を毎年拝見していましたが、継続してこういう形でまとめれていると、その時代のデザインのあり様を振り返って分析することができる。新規に何かを開発したいときも、これを参照することによってデザインの潮流のようなものが見えてくるんです。そういうリソースがほかにないですよね。だから私は日本の国にとってもデザイン界にとっても、非常に重要な動きだと思っています。

Gマークに応募者として関わったこともあります。そのうちの一つを応募したのは1995年で、立体和紙の手法を使った照明器具で受賞しています。これにはエピソードがありまして、新潟の阿賀野川流域の自然の多いところに町の会館を建てる、どういう会館を建てたらいいのだろうかという、そもそもそこからのご相談をいただいたものなんです。ダムが8基ぐらいあるという電力の町で、コウゾという紙の原料が取れるところでもあるのですが、何とか建物のテーマがつくれないだろうかということでした。ただ、建物のために町のテーマをつくるということは、ちょっとおかしいなと思いまして、それならまず地場産業として何かを組み立てよう。電気とコウゾという原料があるなら、それを結びつけると明かりです。自然に恵まれて、水も紙漉きにはすごく深いものですから、川沿いの自然の中の建物が地場産業の発信地として機能するようなものを組み立てたい。そのときに私たちが実用新案特許を取っていた、骨組みもなく、糊も使わずにつくれるという立体和紙の手法がありましたので、それをそのまま町の地場産業にしようというプランを考えたんです。

そういう基盤を設計して、和紙と電力をテーマに会館を建てて、地場産業が進んでいったんですが、町の事業ですから担当者たちが命がけではないんです。テンポも遅かったので、打ち合わせの際に、「何とか売っていかなければいけないのだから、もうちょっとやり方を考えて力を入れてもらわないと困る」と言ったんです。そのときの返答はいまでも忘れません。「堀木さんのデザインが悪くて売れないのか、僕たちの営業が悪くて売れないのか、わからないじゃないですか」と言われたんです(笑)。憤慨して事務所に帰ってきたらちょうどグッドデザイン賞の応募書類がありまして、これは一丁やってみようと、そのうちの一つを応募したんです。これが結果的に受賞できたことで、関係者の認識が新たになって、自分たちがつくっているものが周りからも認めてもらえるものなんだという雰囲気になった。大きく変わりはじめたのは、これがきっかけだったんです。過疎の町でお年寄りの多い町なので、これからの発展を考えたときに非常に重要な事業だと私は思っていましたので、そういう意味でグッドデザイン賞にすごく恩を感じている部分がありますし、思い入れの深い受賞ですね。

雑誌に掲載されて話題になるのは、ある程度一般に浸透していってからですが、浸透させるためにどう動くかというところでつまずいていたんです。デザインした当人がこれはいいデザインだと言っていても我田引水で、町の人たちが自分で言っているだけだろうと思ってしまうとなかなか前に進まない。そういう状況がグッドデザイン賞を受賞したことで非常に変わったという点で、ものすごい役割を果たしていただいたという感じだったんです。

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