内藤 廣
建築家・東京大学大学院 教授
デザインの力が試される時代がやってきました。
現在、我が国は世界的な経済危機に巻き込まれています。見方を変えれば、これは変化に対する大きな機会を得ているとも言えます。我々は知らずのうちに経済危機を通して、役割を終えた古い価値を整理し、新しい時代へと飛躍する準備をしているのです。歴史を振り返れば、こういう時代に新しいデザインが生み出されています。
困難な時にこそデザインは必要なのです。日常生活を支え、豊かにする。テザインがもたらすこのささやかな喜びの積み重ねが、実は新しい時代を切り拓くのです。いつの時代も、デザインは新しい価値や新しいライフスタイルを常に提示してきました。今、人々の心の中にある不安や絶望を、どのようにすれば少しでも癒し、励まし、未来への希望へと変容させることができるのかがデザインに問われているのです。デザイナーには、この危機を勇気と想像力をもって挑戦的に乗り越えることが求められているのです。
「近未来の生活者の立場に立つ」という昨年度に掲げた大きな方針は、まさに今の状況にこそふさわしいものです。近未来からやって来るかすかな囁きに耳を澄ませ、生活者が本当に求めているものに真摯に向き合う。この姿勢が、今ほどデザインに求められている時代はありません。グッドデザインを選定していくこの活動は、未来を見つめ、活気に溢れ、オープンで明るい、そうした価値が往還するプラットフォームでありたいと思っています。
時代の逆風を吹き飛ばし、我が国のデザイン力の底力を世界に知らしめるような多くの応募を期待しています。
飯塚 和憲
財団法人 日本産業デザイン振興会 理事長
グッドデザイン賞の認知率は87%にも達しています。言い換えれば、一億人の日本人がグッドデザイン賞を支持し信頼していることになります。この生活者の暖かいまなざしこそ、日本のデザインを育て未来へと導く大きな力です。
グッドデザイン賞は、2008年度に「近未来の生活」という視点から制度全体を見直しました。そして本年度は、デザインが豊かで明るい未来を拓く活動であることを明らかにするために、まだ「実現されていないものごと」を対象とする「フロンティアデザイン賞」を新設いたしました。
私たちは未曾有の経済危機に直面しています。しかしそのような時期だからこそ、希望を失ってはなりません。内藤委員長が述べられているように、「不安や絶望を癒し、励まし、未来への希望へと変容する」ことがデザインにはできます。そして、そうした人間に備わった健全な能力こそ、デザインそのものなのかも知れません。
今こそデザインの力が求められています。グッドデザイン賞はその求めに応じ、豊かな未来を展望します。
皆様のご支持とご支援をグッドデザイン賞にお寄せくださるよう、お願いいたします。