GOOD DESIGN AWARD

グッドデザイン賞受賞概要

2012年度|審査講評

ユニット1 身辺のデザイン(戸谷 毅史 インダストリアルデザイナー)

A1-1. 個人用品、育児・介護用品|A3-1. 安全・安心のためのサービス・システムのうち身辺に関わるもの|A3-2. 育児・介護のためのサービス・システム|A3-3. 生活支援のためのサービス・システムのうち身辺に関わるもの

このユニットでは、「応募対象分類一覧」に定められた「生活領域」の中から、「個人用品、育児・介護用品」「安全・安心のためのサービス・システムのうち身辺に関わるもの」「育児・介護のためのサービス・システム」「生活支援のためのサービス・システムのうち身辺に関わるもの」について審査をおこないました。広範な内容に加え、趣味性や専門性の高い製品分野を含むため、個々の分野における革新性、技術的優位性、洗練度、社会・生活への影響度などを基本に評価の軸を設定しました。
二次審査を通過した対象には、基本的な機能を満たしながら、生活に彩りを与え、生活や社会を変化させ、人と物、人と人との関係や個人の意識さえも変化させる可能性を持ったデザインを見いだすことができると思います。
本ユニットからは、9点の受賞対象が今年度のグッドデザイン・ベスト100に選出されました。全く新しい「仕組み」によりレンズの位置決めを可能とした乱視用コンタクトレンズ(12GA10017)、素材特性を活かし使用感を高めた使い捨てカミソリ(12GA10049)、睡眠に関する行動意識の変革を導くねむり時間計(12GA10053)、耳穴の手前のくぼみに装着し、使用者の負担を軽減する補聴器(12GA10065)、アナログゲームの楽しさを改めて思い起こさせてくれる新しいカードゲーム(12GA10082)、言葉によるコミュニケーションの文化を伝えることを目指した木の絵本(12GA10086)、製造技術の革新がもたらした3D形状にフィットするファスナー(12GA10090)、編み込み技術の洗練によって新たな可能性を開いたランニング・シューズ(12GA10106)、音響工学的な知識が無くとも音環境が改善できる調音パネル(12GA10122)の9点がそれであり、デザインの概念がいかに人々の生活を変革できるかを示したものとも言えます。
「美しさとつかいやすさ」は本年度の審査指針のキーワードですが、時代や技術が切り拓く「美しさ」、新たな価値への気づきがもたらす「つかいやすさ」を、人々の生活に密着したこの審査分野に見いだせたものと思っています。

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ユニット2 生活のデザイン(1)(澄川 伸一 プロダクトデザイナー)

A1-2. 家庭用品・機器・設備のうち日用品、パッケージ

仏具から文房具に至るまで幅広いジャンルが含まれる本ユニットですが、例年に比べ本年は、全体的に大手メーカーの元気さが欠けているように見受けられました。
「道具としての機能が使用者にとって十分に満足できるものであり、居住空間に美しく存在できるかどうか」といった基準で審査をおこないました。
震災の影響がまだまだ残る国内状況の中、本年も復興支援関連の対象が数多く応募されていました。その中で目立ったのが、有限会社永塚製作所のゴミ拾いトング(12GA10135)。とにかく「ゴミを楽に拾える工夫」がきちんと実現されています。現在も多くの人が被災地において片づけをしている状況で、その人たちの作業からくるストレスをこういった「優れた道具の提供」で軽減することはとても重要です。
また、これからの災害に備えるべき商品群として、充電器やLED懐中電灯などはさすがにレベルが高く、丁寧なデザインをされているものが多かったため、合格率も非常に高くなりました。
他には、株式会社カラーワークスの水性ペイントのシリーズ(12GA1018512GA1018612GA10187)も非常に高評価を得ました。最近は、空間の転用の機会がとても増えています。身近な例では、押入れを改造してミニ書斎をつくる、マンションの一室が託児所になる、などがあり、こういったスペースの有効利用はこれからも増えていくでしょう。この水性ペイントのシリーズは、ペイントすることで、単に部屋の壁色だけではなく、その壁面にマグネットがつけられるようになったり、黒板としてつかえたり、と「機能をペイントする」という新しい切り口を提示しています。さらに、全体のパッケージデザインのバランスやクオリティーもとても優れています。
加えて、最近の傾向として、文具や小物のパッケージデザインにおけるキャラクターの使用に関しても、洗練された見せ方であれば、優れたメッセージの手法の一つであるという解釈に変わりつつあることを一言つけくわえておきたいと思います。

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ユニット3 生活のデザイン(2)(和田 達也 プロダクトデザイナー)

A1-2. 家庭用品・機器・設備のうち調理器具、家電|A3-3. 生活支援のためのサービス・システム

このユニットは「生活のデザイン」としてカテゴライズされた領域で、小さい物はスプーンやカップ等の調理器具から、大きな物は洗濯機や冷蔵庫等の家庭電気製品まで、人々の日常生活には欠かす事のできない道具や機器が対象であります。
審査に当たっては、本年度のテーマである「美しさと使いやすさ」を基軸に「ユーザーの暮らしやライフスタイルに照らし合わせ、これからの時代にふさわしいモノであるかを焦点に審査する」という意識の共有を審査委員全員でおこないました。使い勝手の評価においては、実際に審査委員全員が揃ってその製品を現場で試用・検証することにより、製品の機能や性能を深く知ることが可能になり、審査をよりスムーズにしました。
また、昨年同様、東北地方からも多種多様の製品が集まり、その伝統的なものづくりの中に見られる、感性に響く魅力ある形には驚かされるものがありました。そしてさらに、そのものづくりの中に宿るクラフトマンシップからは、日本がこれから目指さなければいけないものづくりへのヒントが隠されているのではないかと感じました。そのような気持ちで審査を進めると、Future Craftを予測させるプロダクトが現れました。ハリオグラス株式会社のフタがガラスの土鍋(12GA10250)は、従来の土鍋の構造を見直し、熱伝導、蓄熱性を高め、様々な熱源に対応した調理器具です。震災を契機に人と人との繋がりを大切に考え、電気を使用せず、人々が集まって食事するという鍋文化を育むためのものである上に、構成されるすべての部品が日本製である事も大変意義のあるプロダクトだと言えます。社会や環境に不安要素を抱える時代だからこそ、デザイナーの技量と感性が試されているのではないでしょうか。今の人々の暮らしや生き方を見つめ直し、未来へと続くものづくりを考えるときが来ています。新しい技術や革新的な機能にだけ頼るのではなく、日本が持っている豊かな歴史から未来のデザインに及ぼす可能性を読み取り、新たな社会の構築につながるデザインの可能性を探るべきであり、それは特にこの領域においては大切にすべきことであると考えます。

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ユニット4 住まいのデザイン(1)(五十嵐 久枝 インテリアデザイナー)

A1-4. 家具・インテリア|A1-5. 住宅・住宅設備のうち住宅設備|A3-1. 安全・安心のためのサービス・システムのうち住まいに関わるもの

このユニットでは、家具からさまざまな住宅設備機器、内外装建材まで、多岐にわたった住まいに関わる商品が審査対象となりました。本年度のテーマである「美しさと使いやすさ」を鑑み、生活のシーンとして映し出されるものには、奇をてらわない美しさと確かなつくりや機能を求めました。加えて、革新や洗練、新しい技術や素材、明解なソリューション、省エネ、環境や地域産業への貢献などを評価し、審査しました。
エアコンでは、多機能化が進む中、使いやすさを追求したリモコンが多くみられました。ダイキン工業株式会社のらくらくエアコン ラクエア(12GA10480)は、単にシニア向けではなく、誰にでも使い易いという視点が取り入れられています。新たな電気錠を装備したYKK AP株式会社のスマートドア(12GA10522)のドアハンドルは、利便性と操作性の向上を実現しています。TOTO株式会社の浴室ユニット ハーフバス08 タイプ8(12GA10509)では、センターポールとベンチのデザインによって、安全性と共に「新しい入浴のスタンダード」が提案されていることから、高い評価を得て、グッドデザイン・ベスト100に選出されました。
また、節電と災害時の備えから安心で快適な暮らしを提供するクリーンエネルギーと蓄電池のユニット。またハイブリット化などによる高い省エネ性能を実現し、進化を続けているコージェネレーションシステム。エネルギー問題への関心が高まっている現在、コストダウンへのさらなる取り組みを期待したいと思います。インテリア材では、安らぎとスタイリッシュさを求めて「木」が好まれていますが、二つの方向性が顕著になってきました。一つは天然木、もう一方は手触り感までも表現した木目印刷の人工木。天然木は、国産材など無駄のない活用や自然環境の維持を訴求し、人工木は、日常のメンテナンスとコスト面の優位性をアピールしています。資源の有効活用の観点から関心を集めました。成熟分野である家具に関しては、クオリティと時代の変化を捉えた方向性を重点的に評価しました。
震災から1年が経過し経済の低迷が長引く中で、なおも信頼と安心・安全といったテーマはこの領域において不可欠です。その上で、審査を経て、時代に相応しいメッセージの提示もまた必要であると感じました。

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ユニット5 住まいのデザイン(2)(難波 和彦 建築家)

A1-5. 住宅・住宅設備のうち戸建/集合/商品住宅、住戸を含む複合施設|A3-3. 生活支援のためのサービス・システムのうち住まいに関わるもの

本年度は、部門の再編成だけでなく審査と展示のプロセスにも大幅な変更がありました。住宅部門だけについていえば、応募内容には昨年度と大きな変更はないが、それでも時代の潮流を受けて、東日本大震災の仮設住宅や、住宅にまつわる「しくみ」の応募が増えてきています。この点を含めて、本年度の応募対象の傾向について整理してみたいと思います。

1)これまでの主要なジャンルである、ハウスメーカーの商品化住宅、ディベロッパーの分譲マンション、都心の賃貸マンション、ディベロッパーや工務店による建売住宅や宅地開発、リノベーションとコンバージョン、アトリエ建築家の注文住宅、などに加えて、本年は新たに、木造仮設住宅、耐震技術や環境制御技術、スマートハウスのシステム、集合住宅のコミュニティ・サービスなどが加わってきた。

2)ハウスメーカーは、東日本大震災後の復興住宅に対する提案に力を入れ始めている。しかし、昨今の住宅の建設量の減少や住宅供給の多様化の中で、新たな商品開発に明確な方針を示しかねているように見える。その中では、スマートハウスの開発が突破口になる可能性があるが、現時点では未知数である。

3)都心地域における分譲マンションの応募数は、依然として多数に上るが、相も変わらずnLDKタイプの住戸に豪華なロビーと足元のランドスケープを附属させるという大同小異のデザインばかりである。家族構成やライフスタイルの多様化を正面から受けとめた提案を期待したい。

4)リーマンショック以来、しばらく鳴りを潜めていた賃貸マンションが、ようやく復活してきた。分譲マンションと異なり、住戸における提案性が商品価値に直接結びつくジャンルであるだけに、さらに提案性を強めることによって、分譲マンションへフィードバックされることを期待したい。

5)リノベーションやコンバージョンの応募対象が徐々に増えてきた。かつての住宅公団の団地リノベーションも本格的に開始され、現代の家族構成やライフスタイルの多様化に対応した、さまざまなタイプの集合住宅が提案されている。

6)東日本大震災に関連した応募対象として、木造仮設住宅の応募と、商品化住宅における耐震技術や環境制御技術の提案が目についた。これらの提案が復興住宅へと展開することを期待したい。

7)住宅における技術革新の目玉として、スマートハウス技術の提案が始まっているが、まだ試行段階である。今後の展開の可能性は未知数に思える。

8)本年、新たに加わってきたのが、集合住宅におけるコミュニティ・サービスの提案である。「住宅部門」と「しくみ部門」との境界線上のデザインだが、住宅部門としては目に見えないサービスが、住宅の中に目に見えるデザインとして具体化されている点に注目したいと考えている。

最近の傾向として、住宅部門と他の生活部門との境界が曖昧になり始めています。これは都市生活がコンパクトに複合化しているためで、当然の傾向ですが、その傾向を受けとめるように部門の再編成が、そろそろ必要な時期かも知れません。

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ユニット6 情報機器のデザイン(ムラタ・チアキ プロダクトデザイナー)

A1-3. 個人・家庭のための情報機器・設備|A2-1. 個人・家庭のための機器・設備のインタラクションのうち情報機器インターフェイス

本年度のテーマである「美しさと使いやすさ」が、審査方針にそのまま反映されたユニットでした。情報機器に機能を満載してキャパシティを誇示する時代から、ユーザーの行動を先読みして選択肢を特定する時代へ。そういった考え方からか、アフォードさせるフィジカルキーが数個だけ、外観に同化させるように配置され、UIでほぼすべてをまかなう構成が多くなっています。そのため、ハードとしての外観は、極めてシンプルで高い質感表現をするといった方向に動いており、デザイン的には、加飾より「質の向上」へと意識が働いているようです。
このように、インフォメートスペースとしての大画面とその周りの狭額縁ベゼルと最小限のキーという理想的な構成による、スマートフォン、タブレットPC,テレビのデザイン方法論が出揃ってきました。
この状態での審査基準は、当然ミニマルな構成要素を対象とするため、質感の高さや品格が第一義となって目に飛び込み、ついで握って触ってのUI審査となります。ようやくそのミニマルな構成要素で、デザイン勝負ができる環境になったともいえるでしょう。しかし、残念なことに成形品のCMF表面処理で加飾し、フェイクマテリアルでコストダウンを図った、たったひとつの部品にうんざりしてしまうのです。美しさに惹かれるその「一目惚れ」とは何か、この第一義の感性の刺激に注力したアップルが、大成功を収めた事実から学ぶべきことは多いでしょう。
カメラ、ムービーについては、日本が牽引する産業の一つとして、上記情報機器とは異なる独自の進化が見られます。ミラーレスも各社出揃い、一眼の携行小型化が進んでいます。また、立ち入れない専門的プロ領域から直観的UIへの企画モデルが増えてきています。特にカメラについては、フィジカルな操作感とインターフェースのスムーズなつながりが商品の使いやすさに関わるために、プレゼンテーション審査を実施し、企画意図を伝えるヒアリングの場を設けました。

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ユニット7 情報のデザイン(中谷 日出 映像アートディレクター)

A2-2. 生活領域のためのゲーム、ソフトウエア|A2-3. 生活領域のためのメディア|A3-1. 安全・安心のためのサービス・システムのうち情報提供サービス|A3-3. 生活支援のためのサービス・システムのうちSNS等情報ネットワーク

本年度、このユニットではインターネットの新時代を予感させるソフトウェアやサービスが数多く応募されました。本年度グッドデザイン賞受賞対象は、その質も高く、今後日本のソフトウェアデザイン、サービスのあるべき方向性を垣間見ることのできるラインナップとなったのではないでしょうか。
例年、本ユニットのグッドデザイン賞受賞対象には、海外企業のものも多く見受けられました。これまで、インターネットサービスやソフトウェアを創造する上で、そのデザインの方向性は、米国をはじめとするデザイントレンドの影響を強くうけてきたことは否めません。しかし、本年度の受賞対象を見ると、日本のオリジナリティーを強く感じることのできるサービスやインタラクティブなデザインの萌芽が見うけられました。それは、クールジャパンとも言える日本発のインターネットコミュニケーションサービスをはじめ、これまで日本がお家芸としていたゲームインタラクションを基盤とした新たなGUIの開発など、今後のジャパングッドデザインの方向性に大いなる可能性を感じることができるものでした。
また、本年度の審査では、新たなグッドデザインの価値の創造にも取り組みました。今後生まれるであろう、グッドデザインを支える技術研究開発を、未来のデザインのシーズととらえ、その研究の方向性にグッドデザイン賞を贈りました。それは、今後デザインの新たなフィールドとして本ユニットが期待しているVR(バーチャルリアリティ)やAR(オーギュメンテッドリアリティ)といった分野でのグッドデザインが生まれるきっかけとなることを期待したものです。 デジタル技術の進化は、年々速くそして大きく広がり、否応なく我々を未知なる世界へ誘います。本年度、このユニットではそんな近未来のコミュニケーションやサービスでのグッドデザインの方向性を垣間見ることができました。

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ユニット8 生活のモビリティ|ユニット15 公共のモビリティ(福田 哲夫 インダストリアルデザイナー)

ユニット8:A1-6. 移動のための機器・設備|A2-1. 個人・家庭のための機器・設備のインタラクションのうち移動に関わるもの|A3-3. 生活支援のためのサービス・システムのうち移動に関わるもの

ユニット15:C1-2. 公共領域のための機器・設備のうち移動に関わるもの|C2-1. 公共領域のための機器・設備のインタラクションのうち移動に関わるもの|C3-2. 公共領域のためのサービス・システムのうち移動に関わるもの

「モビリティ」では、新製品開発から社会基盤づくりのシステムに至るまで、機能的な工学領域での“安全性”を備えることは大前提であり、感性領域との融合によるデザインの力はそれらを“安心感”へと導くことができます。
「生活のモビリティ」では、環境配慮型タイヤが、素材生産からの一貫したPLCA(プロダクト・ライフサイクル・アセスメント)に取り組み、転がり抵抗性能とウエットグリップ性能という、相反する性能を高分子レベルで解決し、CO2排出量を削減しています。またAR(仮想現実)技術のカーナビゲーション用ヘッドアップ・ディスプレイ(12GA10673)は、安全に配慮された製品として、今後への期待も含めて評価しました。
持続可能な社会を目指すモビリティシステムは、すでに電気エネルギーの消費から、発電・充電・蓄電など送電システムへの転換とその可能性を探っている状況です。さらに超小型電気自動車は、そのスケール感によりこれまでの物流概念を超えて、ネット社会を背景に、少子高齢化のもとでの新しいコミュニティづくりに不可欠なシステムとして動きはじめようとしています。
一方、「公共のモビリティ」では、プレジャー用から人命救出用への発想の転換や、安全性能向上に向けた製品やシステムの改良など地道な活動が光っていました。
特に、鉄道の連続立体交差事業(12GC31032)は、工事用地確保が難しい住宅密集地、複数の過密な交通量の幹線道路との交差、複雑な過密ダイヤ、本線と分岐線への連続した作業計画などの困難な問題に対して、様々な独創的巨大工事用ロボット、信頼性ある信号システムの構築が安全を保障しながら28カ所の踏切を廃止するというものです。鉄道では信号と踏切が安全の要、約十年に及ぶプロジェクト・マネジメントは、事故のない社会基盤づくりとして秀逸であり、百年の計で評価されるものでしょう。
この領域の基礎となるキーワードは“安全性”です。デザインによって製品やシステムへの提案がそれら機能を超えた“安心感”に変わる時、社会は今以上に美しく魅力的になることができるはずです。

ユニット8、15

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ユニット9 産業機器のデザイン|ユニット13 医療・研究機器のデザイン(山村 真一 インダストリアルデザイナー)

ユニット9:B1-1. 素材・部材|B1-3. 開発・生産・製造のための機器・設備|B2-1. 産業領域のための機器・設備のインタラクションのうち工作機器等に関わるもの|B2-2. 産業領域のためのソフトウエアのうち工作機器等に関わるもの|B3-1. 開発・生産・製造のためのサービス・システムのうち製造等に関わるもの

ユニット13:C1-1. 研究・教育・医療のための機器・設備|C2-1. 公共領域のための機器・設備のインタラクションのうち教育・研究・医療に関わるもの|C3-1. 研究・教育・医療のためのサービス・システム

今、世界の産業界は商品製造の為の素材、技術が大きく変わりつつある。
エネルギーや環境問題から求められ変化する材料やそれに伴う生産技術の見直し、また、少品種大量生産から多品種少量生産への移行等、社会の感性ニーズの変化から変わる生産技術等、多様な要因がある。産業の主役でもあった自動車産業においても省電力、超軽量化等から、(スチール+マルチスポット)→(CFRP+接着)等新しい生産技術が次世代自動車の為の技術として、動き出している。この「産業機器のデザイン部門」においても、(縫うから着ける)に代わる、次世代縫製ミシン、「ボンディングマシン(12GB10795)」や(スチールからCFRP)に変わったマシニングセンター(12GB10800)、(大量試験から少量多品種試験)の為の超コンパクト化試験装置等変わりつつある商品の素材、技術を「床下」で支える産業機器の新アイテム応募が見られる今年度の特徴であった。
また「医療研究機器のデザイン」においても少子化、超高齢化等の治療により、増加しつつある多様な少量多品種化へのアプローチで求められる、薬品類の多様化(味覚、大きさ、飲みやすさ)等、多様なバリエーション対応の新医薬品製造システムや、ソフト素材で柔らかく強く動脈にフィットする新血管「ステントグラフト(12GC10946)」等も同様、多様化するニーズに向けての新技術新の風が医療界にも吹き始めた事を感じさせられる今回の審査であった。
また、産業機器、医療、研究機器とも専門性が高く、特定場面での使用が主体となる分野であるが、生産技術や研究機能の多様化とオペレートする人々のグローバル化と多様化により、ユーザーインターフェ―スは従来多く見られた専門性とクローズドな環境に求められたハードで繊細なデザインからソフトで解りやすく、間違いのない、優しいインターフェースデザインへと高い次元で大きく進化していたことも付け加えておきたい。

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ユニット10 事務・流通・販売のデザイン(柴田 文江 インダストリアルデザイナー)

B1-2. 事務用品・機器|B1-4. 流通・販売のための機器・設備|B2-1. 産業領域のための機器・設備のインタラクションのうち事務/販売/流通等に関わるもの|B2-2. 産業領域のためのソフトウエアのうち事務/販売/流通等に関わるもの|B3-1. 開発・生産・製造のためのサービス・システムのうち事務/販売/流通等に関わるもの|B3-2. 流通・販売のためのサービス・システム

デザインの要素の中で、実体を持つカタチの弱まりを実感した本年度の審査でしたが、本ユニットについてはまだまだカタチによる提案の重要性が高いアイテムが多いように思いました。比較的進化のスピードが緩やかな、産業機器の多くは、モノの表現としても未だに使う人にとって快適という段階まで醸成されたとはいいがたく、課題が多いと言えます。
中でもオフィス家具の領域については、製造の都合やコストによって、オフィスという人の営みに対してのデザイン配慮が削がれてしまっている感が否めません。しかしそんな中にあり、イトーキのオフィスファニチャー カコミ(12GB10746)の製品精度の高さと創造的な場づくりの提案は、日本のオフィス家具のレベルを引き上げてくれるような予感を感じさせてくれました。
カタチのないデザインの中ではモリサワのクラウドフォントサービス(12GB20883)が審査委員一同の注目を集めました。Web上でも印刷媒体と同様に美しく読みやすい文字を提供するシステムは、活字からつづく文字のさらなる展開の先駆けであり、今後このようなシステムの普及につながることと思います。
システムと機器による総合的なデザインによって、港湾事業の効率を高めている豊田自動織機のAGVシステム(12GB30904)は、作業員の高齢化による人材不足や高コストという、日本の港湾事業が抱えている問題を高次元で解決しており、海事産業戦略にとってのデザインの有用性を示しています。
産業という括りの中で集まった多様なデザインに対して、まとまった方向性を見出すことは難しかったのですが、カテゴリーごとには進化の方向性に一貫した流れを見つけることができましたので、それぞれのカテゴリーを牽引する力をもったアイテムを高く評価することで、審査現場からのメッセージとさせていただきました。

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ユニット11 産業領域の建築・施設(千葉 学 建築家)

B1-5. 産業領域のための空間・建築・施設

本年度の「産業領域の建築・施設」部門は、例年とほぼ同数程度の応募がありました。用途としては、オフィスや研究所、工場など、例年通りの広がりを見せ、そのうち約30作品が受賞し、さらにその中から2作品がグッドデザイン・ベスト100に選ばれました。概ね例年通りの応募状況であり、また受賞状況であったと言っていいでしょう。
ここ何年かを通じて顕著な傾向は、やはり環境への取り組みに力点を置いた作品が圧倒的多数を占めていることです。建築をつくる上で、いかにして環境への負荷を抑えるか、そのための様々な技術をデザインに統合させていくことは、もはや当たり前になったことを実感します。大変好ましいことです。しかしながら従来は、どの作品においても似たような目標設定と技術の応用がなされ、結果的に均質な場がそこかしこでつくられていた印象が強かったが、今年は環境が場所ごとに、使う人ごとにきめ細かく読み取られ、さらにそこでの活動や生産も含めた広い意味でのエネルギーサイクルも視野に入れた作品が増え、環境を切り口にしたデザインが成熟期に入りつつあることを感じさせてくれました。環境とは本来、人によって感じ方も違えば、場所によって意味も異なるものであるから、このような進化は歓迎すべきであるし、今後のさらなる展開にも期待のもてるものです。
もう一つ、今年印象深かったのは、The Share(12GB10847)や松江データセンターパーク(2GB10872)に代表されるように、これまでデザインと捉えられていた概念そのものを覆してしまうような作品が見られたことです。前者は、長い時間放置されていた古い社員寮を改修してシェアハウスへと転用したものであり、後者はデータセンターを建築としてではなく、運搬可能なコンテナとしてつくることで、メンテナンス性やエネルギー効率を高めたものです。どちらも最終的にできあがったかたちだけを見れば、いわゆる美しいものではないかもしれません。しかし、そこでの住まい方を支援する仕組みをつくることで、ありふれた建築が俄然魅力的な場所として価値を持ちはじめたり、コンテナという新しい仕組みを持ち込むことで、そもそも建築では不可能だった性能をいとも簡単に達成するなど、刺激的な試みが実現されています。建築におけるデザインとはそもそも単に美しいものをつくることではなく、従来の枠組みを超えた生活の新しい可能性を拡張することであることを、この2つの作品は改めて見せてくれています。今後もこのようなデザインの力を感じさせてくれる作品が数多くつくられることを期待します。

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ユニット12 企業・ビジネスのデザイン(日高 一樹 デザイン・知的財産権戦略コンサルタント)

B2-3. 広告、宣伝、ブランド構築、CSR活動|B2-4. 展示会、見本市|B2-5. 産業領域のためのメディア|B3-3. ビジネスメソッド、ビジネスマネージメント|B3-4. ビジネスイノベーション、ビジネスモデル

本ユニットでは、事業・経営のデザイン、企業価値構築のための活動、ビジネスモデル、広告・宣伝などの企業コミュニケーション、CSR活動等のデザインを審査対象としています。この分野の最大のテーマは「急速なグローバリズムの中、商品・サービスの新たなポジショニングを構築する企業活動」や「環境問題・超高齢化社会など社会的課題に対する価値創出」でした。本年度の応募はこのテーマにトライしているものが多く見られました。
審査にあたっては、コンセプト・仕組み・表現の要素が複雑で多様な組合せとなるため、上記テーマに対するソリューションレベルや時間軸における可能性を勘案し、主な評価要素を次のように定めました。

1)生活者・企業・社会・経済価値を実現する行為選定の適格性・目的性と具現化へのデザインコンセプトが明確であること。
2) 1)を具現化したコト・モノが生活者や社会に対して強いコミュニケーション力があり、そのクオリィティが高いこと。
3)具現化要素の関係性が整理され、価値構築のための一連のフローが戦略的に構築されていること。
4)持続性・発展性があること。

この評価要素に基づき、以下の受賞対象が高い評価を得ました。

  • 株式会社タニタのタニタ食堂(12GB30916):社会貢献活動であると同時に、企業の無形資産活用による新たなモノづくりや企業価値構築の方法論を実現したこと
  • 株式会社電通のAQUA SOCIAL FES(12GB20885):「商品購入の有無に関わらず参加可能な “共成長マーケティング”」を採用し、社会貢献活動と広告、両面を強化するマーケティングデザインを実現したこと
  • 株式会社アキュラホームの木望の未来プロジェクト(12GB20891):大工の減少という課題に対し、子供達に小学校の学習机を修理・交換する体験学習を導入。「ものづくりの楽しさ」「大工という職業の理解」と発展するフローを経験型デザインで実現したこと
  • 株式会社ワイス・ワイスの東日本大震災被災地周辺域の杉を活用したエコファニチャー事業(12GB30920):「自立するための仕事を持つこと」に応えるビジネスモデルを商品デザインにより確立したこと
  • 鳴海製陶株式会社のOSORO(12GB30915):新たな使用価値の創出と同時に食品開発などの発展性があること。経営資源を活かす商品開発手法や発展性のある商品戦略マネジメントを実現したこと

企業活動の原点に立ち返るべき現在、デザイン思考による価値創出を将来に向け積極的におこない、世界に誇れる事業や活動が多数生まれることを期待します。

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ユニット14 公共のデザイン・社会のデザイン(南雲 勝志 デザイナー)

C1-2. 公共領域のための機器・設備|C1-3. 公共領域のための空間・建築・施設|C2-1. 公共領域のための機器・設備のインタラクションのうち公共機器設備に関わるもの|C2-2. 公共領域のための広報・公聴|C2-3. 公共領域のためのメディア|C3-2. 公共領域のためのサービス・システム|C3-3. 都市づくり、地域づくり、コミュニティづくり|C3-4. 社会基盤、プラットフォーム|C3-5. 社会貢献活動、国際貢献活動

一昨年に起こった東日本大震災によって私達の価値観は大きく変わったと言われますが、デザインの分野ではどうでしょうか?
今まで継続してきた事にいきなり舵を変えることは難しいかもしれません。
しかしながら震災に遭った人々や地域は、いまも待ったなしの状況が続いています。そこにはまさに生きるか死ぬか、町を守るか捨てるか、これからの未来をどう築いていくか? ということを、短時間に解決しなければならないという、避けては通れない現実があるのです。
一年以上を経て、本年のグッドデザイン賞には被災地でおこなわれている様々なデザイン活動の応募があり、昨年と明らかに違う新たな価値観、これからの社会や生活の豊かさにとって必要な最低限で最も大切なもの、が伝わってきました。それは実は被災地だからではなく、今後どのような地域でもどのような分野でも公共を考える上で避けて通れない問題意識として持つべきであろうことです。 また、震災と同様に考えなければいけないことに地域再生が挙げられます。
少子高齢化が進み農山漁村や地方都市の問題とどう対峙していくか? 官民市民企業の枠を超えた連携が必要です。 審査の結果、震災に関連するプロジェクトとしては、被災地支援活動の建築プロジェクト みんなの家(12GC31049)、地域再生復興プロジェクト A Book for Our Future,311(12GC31052)をはじめ、グッドデザイン・ベスト100に4点が選ばれました。
そのような意味から、プロダクト、建築分野では従来の発想からもう一歩踏み込んだ応募が相対的に少なかったように思います。ある意味、危機意識をいかに持ち、これからの社会にデザインがどう立ち向かったかというところが、このユニットでの審査の大きな判断材料となりました。 そんな中、プロダクトでは自然換気対応型カーテンウォール、サッシ ARM-S@NAV(12GC10972)が高く評価されました。機密性が求められるアルミサッシに、自然で心地よい風を通すというまさに逆転の発想で新しい価値をつくっています。
土木のデザインとして曽木の滝分水路(12GC31035)は、災害時にいかに人命を守るかという命題のなかで、風景や景観、訪れる人のアメニティを同時に解決するといったレベルの高さを見せてくれました。

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韓国審査ユニット(渡邉 誠 インダストリアルデザイナー)

本年度より始まった海外審査の一つである韓国ユニットでは応募対象の6割は、情報機器、電子機器製品であり、グローバル企業の製品が数多く連なっていました。一方で、海外審査ならでは、韓国の中小企業の製品も見られました。また、大型の梱包システムやその他の大型システムの対象も見られ、これらも海外審査ならではという対象であると言えます。一方で、現地プレゼンテーションによるインタラクションやインターフェースデザインの審査も、海外審査があったことにより実現できたと言えるでしょう。 このように、海外審査のメリットは、今までは、何らかの障害で申請が見合わされたような対象までも審査することができることを実感させられました。そしてこのような対象が高いポテンシャルを有していることは、受賞対象を見ていただければ納得できるでしょう。
審査対象のトレンドとしては、やはり卓越した技術を伴う高品位な電子機器であります。技術とデザインが完全に融合したすばらしい製品を数多くまさしく「堪能」することができる審査でありました。また、インタフェィスもグローバル化しており、一昔前のお国柄が出てしまうような色彩や形状を伴うインタフェィスはなくなり、使いやすいスマートなインタフェイスがラインナップしたことも本年度の特徴であると言えます。今後もこの分野の発展に期待するとともに、他の生活用品の進化にも期待します。
海外審査には、今後も様々な課題がつきまとうでしょう。特に日本の審査との整合性や審査時期の違い等が課題となりますが、審査の中身は全て同一で厳正なものであると断言できます。本年度の申請対象の多彩さを広くアピールし、より多くの対象を海外で審査できればと期待します。

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台湾審査ユニット(渡辺 弘明 インダストリアルデザイナー)

韓国同様、台湾でも本年より現地審査が行われたことにより、審査対象は例年になく幅広いジャンルに及び、この地域での産業分野毎の成熟度を伺い知る機会にもなった。情報機器、電子機器に於いてはクオリティの高さが顕著で台湾インダストリーの象徴的役割を果たしている。福祉機器、インターフェース等これまで申請のなかった分野でもレベルの高いプロダクトが見られた一方で、市場がドメスティックに限られたプロダクトではグローバルな水準に達してない物も見られた。とりわけ家電の受賞数が少なく、今後の課題として取り組む必要性を感じた。
過去台湾では欧米及び日本でデザインされた情報機器のODMセンターとしての役割を担ってきた。その間、ものづくりについての多くを学び取り、幾つかのプロダクトでは、台湾メーカー独自のブランドが海外ブランドと同等、それ以上と言っても過言ではないまでの成長を遂げている。特に数多くの受賞を勝ち得たAsustekに於いては、グッドデザイン・ベスト100に輝いたBU400(12GA10339)のみならずノートPCラインナップの殆どで受賞を果たした。それぞれに明確なコンセプトを打ち出し、ブランドとしてのデザインの一貫性も感じ取ることが出来る。また、スマートフォンとPCをハード的にコネクトした製品などは、大企業特有の縦割り組織による弊害を衝いた柔軟な企業体質の表れとも言える。
数少ない家電製品の受賞製品にあってグッドデザイン・ベスト100にも名を連ねたTATUNGの電機鍋(12GA1025512GA10191)は、台湾ならではのプロダクトとして印象深い。そのルーツは50年以上前の東芝の炊飯器である。日本では、今日炊飯器といってもその原型をとどめるものは皆無であるが、このデザインはまさに正常進化を遂げ、当時の日本の食に対する思いを今に伝えている。変化が必ずしも進化ではないと改めて考えさせる逸品である。
多くのプロダクトに見られるように、日本と台湾はものつくりに於いて古くから密接な関係にあったが、これまでの教える一方の立場ではないことは明らかである。

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タイ・デザインエクセレンス賞との連携応募に対する審査(廣田 尚子 プロダクトデザイナー)

タイからのグッドデザイン賞への応募は、タイ・デザインエクセレンス賞に受賞したものがエントリーする規定になっています。そのため、日本でのグッドデザイン賞審査時の質は、高くまとまっています。また、タイ国内消費向けの製品よりも海外市場に向けて企画デザインされた物が多くなっています。本年は家具・生活用具・壁面装飾・生活雑貨・宝飾品・パッケージ・ファッション雑貨・ファッション資材からのエントリーがありました。
その割合における特徴は、家具が半数近くを占め、次いで生活雑貨、パッケージといった具合で、重工業・乗り物・デジタル関連は極めて少ないという点です。家具の割合が多いことや他分野でも秀でているデザインに共通する、タイのデザインの特徴は、タイ原産である資材を活用し、エコロジーや自然回帰、またはタイの生活に根付いたモチーフをコンセプトとして、そこへインターナショナルに通用するデザインを施すことだといえます。自国の素材を使って自然に即した技術と世界に共通化した言語としてのデザインを尊重することによってグローバルな市場を獲得する。それは自然の摂理に抗わず、人と環境と産業が共存していく社会にこそ、未来があると指し示しているように感じます。タイが模索しているのは、経済一辺倒の右肩上がりではなく、水平方向に無限に広がる有機的な発展ではないでしょうか。あるいは、一度に大きな市場は獲得しないかもしれないけれど、長期的に見て破綻をきたすことを回避した、持続可能な人間の尺度に合うひとつの理想的な発展のしかただと確信しています。それは、経済発展という軸から逃れることができない日本が見失った、人間的バランスを保った未来像ではないかと感じます。タイが今後デザインで更なる成長を遂げ、そのバランスをより美しく保つことを大いに期待しています。

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